ベルギー王立美術館コレクション

帰路、新宿の東郷青児美術館
「ベルギー近代絵画の歩み」
こないだのBunkamuraの展覧会とセットでという思いもあるのですが、こちらはベルギー近代絵画といっても、ルネ・マグリットポール・デルヴォーもいない。あくまでベルギー王立美術館のコレクション展という位置づけでしょう。
名の知れたベルギーの画家では、フェルナン・クノップフが二点。これはよいです。ジェームズ・アンソールが三点。
Bunkamuraではエッチな絵ばっかりだったフェリシアン・ロップスの普通の油彩も見れます。
今回はじめて知った画家の中でよかったものは、
イッポリート・ブーランジェの<聖ユベールのミサ>
画面の暗さがドラマチック。
イジドール・ヴェルヘイデン<死んだ鹿>
19世紀末の作品ですが、今見るとスーパーリアリズムに見える。
ジェニー・モンティニー<冬の下校>
閨秀画家っていうか、つまり女性なのですが、これ一点でしたが、これはよかった。色の統一感とマチエールの意図が明らかで、印象派的なんですけど画家のオリジナルな表現意図がはっきりわかって、しかも成功している。
英一蝶を見た後なので、油彩の画面はごてごてして感じられもしていたのですが、そういう画面も画家が意識的に臨んでいると、英一蝶の伸びやかな線から受けるのと同じ種類の感銘を感じさせます。
アルベルト・バールツン<ゲントの夜>
会場の雰囲気としては、これが一番人気を博していた様子。
ベルギーの街の匂いを感じさせます。行ったことないから知らないですけど、たしかにパリでもロンドンでもないなという感じ。夜の沈鬱。
ベルギーは工業都市なので工場風景みたいなものも絵に登場して、そこが興味深かった。フェリシアン・ロップスのああいうフェチシズムも社会の機械化や工業化と無縁でないと思うので。
ジョルジュ・レメン<子ども部屋>
油彩なんだけど、赤と青の色鉛筆かなと思うような小品。ちょっといいなっていう。
ベルギー以外の画家ではコロー、クールベシスレーゴーギャンルノワールマチス、ボナールがあります。
マチスの<静物ヴェネチアン・レッドの室内>よいです。
そして、ボナールの二点、
<ミシア・ゴドブスカとタデ・ナタンソン>

<逆光の中の裸婦>。
<逆光の中の裸婦>を観ていると、ボナールがいかに光にこだわったかというのがよく分かります。対象のすべてを光に分解したかったのでしょうかね。
窓の外、窓にかかるレースのカーテン、それ越しの光を受ける壁紙、陰になっている壁にかかる鏡、それに写っている裸婦の一部、裸婦が手にする香水の瓶、そして逆光の中の裸婦。すべての光が正確に描き分けられています。
ボナールにとって対象の放つ光が、対象のすべてだったのかな。
常設展示されているセザンヌと較べるとまるでちがう描き方です。