音楽機械論

音楽機械論 (ちくま学芸文庫)

音楽機械論 (ちくま学芸文庫)

この前に読んだ本がきな臭すぎたので、ちょっとにおい消しというわけでもないけど、何日か前に書いたNHKで立て続けに見た音楽関係の番組で、すこし詩と音楽について考えることがあったのでちょうどよかったし。
私は自分に音楽のテイストがないことがわかっているので、このまえ読んだ村上龍中上健次の対談がずっとひっかかっている。サルサとレゲエについてのあれだけど。坂本龍一は、この2人の共通の友人でもある。
吉本隆明の出自は詩人なのだし、どんな感じの対談になるのだろうと思っていたけれど、坂本龍一がじつにわかりやすく音楽の今についてちゃんと、吉本隆明の質問に答えているのに感心した。
吉本隆明の質問も的確だし、ホンモノは異種格闘技でも強いということがわかる。
坂本龍一の言葉を読んでいて、この感覚はどこかで経験したことがあると考えて、思い当たったのは、フェルマーの定理とかポアンカレ予想とかについて素人にわかりやすく(実際は全然わからないけれど)書いている本を読んでいる感じだ。
自分にとっての音楽って何なんだろうと思っていたのだけれど、それは詩なのだとわかった。私は音楽というより詩を聞いていたと思う。
それは自分の感覚がけっこう強く土に根ざしているということの確認でもある。それはけっこう心強いことでもある。ことあるごとに土に対する権利を主張する僭称者たちに対して、私自身の王位を主張する権利を心の中に見つけた気持ちがするからだ。