夢と追憶の江戸

日本橋三越のとなりにある三井記念美術館で、高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展。慶応義塾創立150年記念だそうだ。
この展覧会は、前中後期と二回も展示替えをする。そのかわり300点を展示しようという展覧会。
三井記念美術館については前にも書いたけれど、他の美術館と違うのは、江戸時代から続くおおだなのご本家なので、お邪魔してちょっとお宝を拝ませてもらっているという感じがすること。
そのせいかどうか、今回はじめて鈴木春信の絵をいいなと思った。「いい女だな」と。
「風流 四季歌仙 二月 水辺梅」に描かれた少女の、石灯籠に肘をつくその肉感をはっきり感じた。そして、この少女自身が石灯籠にしなだれかかる自らの肉体を意識している。
少女のために梅の枝を折ろうとする少年もまたおそらく、朱の欄干に上る裸足の足が、はだけた裾から見えているのを意識しているだろう。
梅の香が匂いたつ暗い闇を背景に、性に目覚め始めたばかりの若い男女の肉体が、冷たい石灯籠と朱の欄干を介して巧みに表現されている。
ずっと時代は下るが、月岡芳年の「奥州安達がはらひとつ家の図」も展示されていた。こちらは、赤い腰巻ひとつで天井に逆さづりにされた妊婦の苦悶の表情。
今更気がついたけれど、浮世絵についてはこうした性の表現、春画とかあぶな絵といわれる世界を切りすてて鑑賞しても意味がないと思った。それについても体系的に評価して保存展示公開すべきだと思う。