最低賃金1000円

民主党は「最低賃金1000円」というのをマニフェストに掲げたが、その1000円は時給だから、一日8時間を20日働いたとして月給に直すと、総支給16万円である。そこから年金、社会保障費、税金が引かれると手取りでいくらになるだろうか。
そんなものが「払えない」といって抵抗している企業は、タイでもベトナムでも日本から出て行ってもらっていいと思う。実際、そんな給料しか社員に払えない企業を存続させる意味があるか?社員にまともな生活もさせられないのであれば、日本社会で企業活動する資格がないと思う。
企業がこれに抵抗する根拠はおそらくふたつ。
ひとつは高度成長以来の日本の奇習、終身雇用を前提とした年齢給。
高度成長も終身雇用もとっくに崩壊しているのに、年齢給という制度だけが形骸化して残っているので、「最低賃金1000円」というと、企業はそれから定期昇給させていかなければならないという意識になる。
1955年当時の大卒の初任給は約10,000円、それが40年後には約200,000円になっている。その40年間を定年まで勤めた人の給料は、当然、新入社員の初任給より更に高いはずだから、その高度成長期の意識を拭い去れないと、「最低賃金1000円なんてとても払えない」ということになる。
もうひとつは、時間外勤務とボーナスだろう。
失業率が上昇する中、少ない社員に長時間の時間外勤務をさせるのは、そのほうがもうひとり雇うより安くつくからだろう。最低賃金を上げるのと同時に、時間外手当も200%にあげれば、残業させるのではなくもうひとり雇おうという気になるだろう。
それとボーナス、賞与、という意味の分からないものも廃止すればいいだろう。あれからは税金も年金もとれない。何なの?あれ。
最低賃金1000円」という公約は、どういうつもりで掲げたにせよ、終身雇用と年齢給の廃止という方向にパラダイムをシフトしていくという意味で、よい政策だったと思っている。惜しむらくは‘2000円’と思い切れなかったところ。それなら、月給総支給32万円なのだから、よほど浪費しない限り、何とかまともに生活できると思うのだけれどどうでしょうか。
たとえば、‘CO2の5%削減’というと無理なものが‘25%削減’というと、パラダイムシフトが起こりビジネスチャンスが生まれる。最低賃金に関しても同じことが言えると思う。
もちろん、そのかわり定期昇給とボーナスは事実上なくなるのだけれど、私はそのほうがいいと思いますね。いちばん消費意欲が旺盛な若いころにカネがなく、老人になってからカネがたまっているという制度の行き着く先がどうなるかは、現に私たちが経験している少子高齢化のこの社会のありようなのである。活力がありますかね。