
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/11/06
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つまり、「人ってこういうことだよね」とか、うっかり口にできないし、もちろん、「人」だけでなくて、「男って・・・」とか、「女って・・・」とかもそうだし、「親って・・・」、「子って・・・」、「恋人って・・・」と対象を細分化していけば行くほど胡散臭くなってくる。
だから、今という時代は、多くの人が「あるべき」という規範を保留して生きている。少なくとも私はそう。私についていえば、「こうあるべき」という規範は持たない代わりに、「こうありたい」とか「こうはありたくない」というぼんやりした理想をたよりに生きている。
こういう時代に「悪」を描くということはとてもむずかしいのではないかと思う。
吉田修一の『悪人』は、思っていたよりずっと純愛小説していて、パッショネットだったので驚いた。
しかし、物語が盛り上がると、そのかわりに「悪」というテーマはこぼれ落ちていくという感じを味わった。
たとえば、トルーマン・カポーティの『冷血』は、「事実」が走り出しそうになる「物語」にブレーキをかけている。
途中から加速がついてぐいぐい読ませる展開をよしとすべきか、流れたとすべきなのか。