笑福亭仁鶴独演会

相模原市民会館にて、笑福亭仁鶴の独演会があるとのこと、寒風をものともせずにでかけた。
上溝の駅から相模原市民会館はすこし(タクシードライバーがいやな顔をするくらいの)距離があった。電車一本早く出かけておいてよかった。
いくら昨今の落語ブームとはいえ、関東ではめったに高座に上がらない仁鶴の独演会に、それほどの客は集まるまいと思っていたのだけど甘かった。NHKと吉本興業の力なのかなぁ、よくわからないけれど。
演目は、

笑福亭笑助 つる
笑福亭仁昇 手水廻し
笑福亭仁鶴 道具屋

中入り
 
笑福亭仁智 トクさんトメさん
笑福亭仁鶴 崇徳院

前座を務めた笑福亭笑助は、笑福亭笑瓶の唯一の弟子だそうだ。その紹介だけで笑いが取れていたから笑瓶もたいしたものだ。
笑福亭仁智の落語は、関西にいるころときどきテレビで聴いた。
今回もそうだけれど、この人の創作落語は、いつ聴いても面白いのでびっくりする。創作落語というと桂三枝が有名だけれど、わたしは、桂雀三郎とこの人が頭抜けて双璧だと思う。
笑福亭仁鶴の落語を生で聴くのは今回が初めてだったけれど、完成度の高さに舌を巻いた。
音楽好きでよくコンサートに行く人は、ミュージシャンがCDのクオリティーをライブでどのくらい再現できることを期待しているものだろうか。ライブでもCDのクオリティーを寸分たがわず再現していたとしたら軽く驚かないだろうか。
わたしの今回の仁鶴体験はそれに似た驚きである。
まくらからサゲまで一切ペースを乱さない。崇徳院のサゲに近いところで誰かが携帯を鳴らしたのだけれど、微動だにしなかった。見事なものだった。
以前、柳家小三治がインタビューで語っていた、
「落語はウケようとしてウケるもんじゃないんです。人物が生き生きとして蠢いていれば、面白くできてるから笑っちゃう。・・・」
という言葉をあらためて思い出していた。今日の仁鶴がまさにそうだった。
落語という芸をリスペクトして、客に媚びたところがない。それでいて、噺のどこをとっても仁鶴以外のだれでもない。思わずうならされた。