「ゼブラーマン ゼブラシティーの逆襲」

knockeye2010-05-08

去年の「ヤッターマン」以来の三池崇史監督作品。物理を無視したスピード感はあいかわらず狂気を感じさせる。
アイアンマンのときに書いたが、昔からヒーローは正体が分からないのが常道だった。いわく、‘どこの誰だか知らないけれど誰もがみんな知っている’、或いは、‘誰も知らない、知られちゃいけない、デビルマンは誰なのか’、など。
とくにスーパーマンは、むしろふだんよりすっぴんなのに誰も気がつかないという、考えてみればかなり無理な設定なのに、たかが映画にまで論理的整合性をもとめるアメリカ人も、それについては誰も咎めたてしない暗黙の了解ができていた。
なので、「アイアンマン」のラストで、ロバート・ダウニーJr.演じるトニー・スタークが正体を白状してしまったときは、続編を作る気がないのかと思った。
ご存知の通り「アイアンマン2」はもうじき公開される。思い出してみれば、ウィル・スミスの「ハンコック」も正体バレバレで、しかもみんなのきらわれ者だった。一昔前まで、正義のヒーローの正体が分からなかったのは、ある意味で正義の絶対性が信じられていて、この世の秩序がどうやって保たれているかについて、一般人は知らないでいることに、むしろリアリティーがあったといえるのだろう。
しかし、今という時代はそうはいかない。正義が質的に変化したのだろう。わが国のヒーロー、ゼブラーマンもすでにその正体は広く知られており、自宅はテレビレポーターに囲まれ、おちおちゴミも出せない。おかげで家族は崩壊し、職まで失っている。
正義の正体がばれてしまった時代を、すくなくとも日米は共有しているのかもしれない。

ゼブラーマンとアイアンマン、その問題解決の道筋はずいぶん違っているが、ゼブラーマンには正義を指向する使命感があり、それを実現する行動力がある。そして、最後には、とにかく、エイリアンから地球を救う。
鳩山由紀夫ゼブラーマンに学ぶべきなのである。まぁ国民にとっては彼はむしろエイリアンだといううわさも聞くが。
小林信彦のお気に入り、仲里依紗のゼブラクイーンがセクシー。ダンスシーンに磨きをかけるとさらによかったと思う。
三池崇史監督も
「今日のようなヌルイ映画しか作られない時代には惜しい女優だと感じています。今後の暴れっぷりを期待します」
と絶賛している。