週刊誌ネタふたつ

今週の週刊SPA!の坪内祐三福田和也の対談記事に
福田「・・・これは山本七平さんが書いてるけど、山本さんは英語ができるから、戦後、米軍関係の施設かなんかで働いてたの。で、キャップみたいな上官に言われるわけ。
『オレは南部人なんだけど、ダーウィンの進化論を信じている。お前は進化論を知らないだろうけど』
と。」
坪内「ははは。」
福田「で、山本さんが
『日本人はみんな進化論を知ってますよ』
と言ったら、上官がすごい驚いて、
『お前ら進化論を知ってるのに、天皇を神様だと思ってたのか?!』
と。
これはなかなか、ファンダメンタルな問いで、七平さんらしいエピソードだよね。」
秀逸。読んでて思わず笑っちゃった。切り返すとすれば‘てめえだって進化論知っててカトリックだろうが’ということなんだけど、でも、重要なのは、天皇カトリックもファンタジーに過ぎないということと、天皇というファンタジーには、政治というリアルが、どろどろに混入してしまっているということ。
つまり、小林秀雄が、「日本が神の国ってファンタジー、なんかステキやん」と言ったのだとしたら、そのファンタジーのおかげで、級友たちを戦地で死なせた加藤周一が「ふざけんな」と怒ったのは当然なのだった。
これも週刊誌ネタだが、神足裕司が、週刊アスキーのコラムにこう書いている。
満州で始まった大戦の後始末をおっかぶせられたのが沖縄だ。米軍基地は日本を守ってくれるかなどと尻の青い議論をいつまでもする輩がいるが、占領中のGHQへもっと占領を続けてくださいとお願いしたのは昭和天皇だ。」
と、けっこうぶっちゃけたことを書いている。
このブログで繰り返しオススメしている豊下楢彦を読めば、上の神足裕司の意味がわかる。
もっとぶっちゃけていえば、昭和天皇は、天皇制の存続と引き換えに、アメリカに沖縄を差し出した。
と、一般ピープルは、そう考えておくと、モノゴトがわかりやすい。少なくとも私は、現時点ではそう考えている。
大前研一はブログに

日本の国防とは「基本的に嘘をつく」ことが前提になっていることが分かります。
(略)
米国の立場になってみれば、移設資金さえ出してくれるなら、喜んで全部グアムにでも移設すると言うでしょう。

と書いている。
天皇制と日米安保は、ファンタジーの世界で結びついている。しかし、現実にコミットしようとするファンタジーはウソでしかありえないのではないか。
そう考えていくと、象徴天皇制という制度は、日本人がしがみついている国家神道というウソが、二度と現実にコミットしないように、ファンタジーに閉じ込めておくための装置なのかもしれない。
日米安保というこの複雑に絡み合ったまやかしは、政権交代で今度こそ抜本的に見直されるかもしれないと、オバマクリントンは身構えていたかもしれなかった。普通に考えれば、それが政権交代というものだからである。
それに、そもそも日米安保というウソが現実に機能したのは、冷戦構造の下にすぎなかった。政権交代日米安保改定から50年は、日米の新しい関係を築くために、またとないよい機会だったはずである。
しかし、時の宰相が鳩山由紀夫だったのは、不運としか言いようがない。
鳩山由紀夫は金魚に似ている。ガラス越しにちょっと突付けばすぐ向きを変えるが、結局どこにもいかない。
「進化論を知ってて、天皇を神様だと信じてたのか?!」
と驚いた山本七平の上官のように、アメリカ政府の高官たちもおどろいているだろうか。
「ニホンジン、本気であの珊瑚礁を埋め立てるつもりか!ひとこと『出てってくれ』といえばいいのに?」