姑息の対義語は愚直

小沢一郎の隠しだま、樽床氏をテレビで見てしばらく絶句していた。
目にほとんど表情がない。この目付きは小沢一郎周辺の人間には共通しているのか、いぜん生方議員を辞めさせようとして失敗した輿石氏もこの目をしている。
一本調子でいろいろな政策を並べ挙げていたが、どれにもまったく熱意を感じない。
誰かが推薦の弁を述べていた。
「樽床くんは、フレッシュで、さわやかで、ご本人によると、たいへんな政策通でもあり(笑)・・・」
笑っている場合ではないはずで、この推薦の弁にもまったく危機感がないことがわかるだろう。
おそらく、樽床氏自身も、推薦人たちも、本気で樽床氏が党首になるとはまったく考えていない。小沢一郎の周辺が、選挙にしか興味がないことは周知の事実で、この樽床という人物が総理になって、次の選挙が戦えると、彼らが考えているはずがない。小沢氏周辺から本気で代表を立てるなら、細野豪志か、原口一博が出ればいい。
けんかに負けた犬が、くやしまぎれにあたりかまわずションベンを振りまいていくことがあるが、今回の幹事長辞任は、小沢一郎にしてもちょっと悔しかったのだろう。この程度の嫌がらせ、あるいは、示威行為をしておきたいほどには。
「樽床くんは、フレッシュで、さわやかで、ご本人によると、たいへんな政策通でもあり(笑)・・・」
よく聞けば、この推薦人の言葉自体が、菅直人に対する当てこすりであることがわかるはずだ。
こういうことを政治だと信じ、みみっちい政権抗争に憂き身を費やしてきた、それが小沢一郎の政治人生だったのだろう。
ところで、普天間問題のどさくさにまぎれて、郵政関連の法案が通ってしまったが、リンク禁止でおなじみの日経ウエブによると、
「アメリカ通商代表部(USTR)は14日、日本政府が4月末に閣議決定した郵政改革法案を巡り、WTO大使級の協議を21日にジュネーブで開くと発表した。
日本郵政グループへの優遇措置を盛り込んだ同法案に対し、米国とEUがWTOへの提訴も視野に是正を求める公算が大きい。」

そもそも、この郵政関連のことは、亀井静香小沢一郎の、小泉純一郎にたいする私的怨恨にすぎないと、気がつかないほどナイーブな日本人がいるだろうか。
冷戦構造と高度経済成長のもとで、国際的な視野をもたずに過ごしてきた日本の政治が、子供のけんかじみた幼稚な権力抗争になってしまったことを、改めて強く感じる。
何度もいうけれど、308もの議席を付託されながら、民主党はなぜ愚直に公約を守ろうとする努力をしなかっただろうか。
せめてその努力の姿勢なりと見えていれば、今のような状況にはならなかっただろう。
先月末の日経の世論調査によると、無党派層民主党の支持率は4%だそうだ。消費税より低い。すくなくとも一般市民の意識は、この国の姑息な政治家よりはるかに高いようである。