有元利夫

東京都庭園美術館有元利夫を見てきた。
この画家は、オムニバスな展覧会で時々見かけて気になっていた。
どんなところで見かけても「有元利夫だ」とひとめでわかる、そういう個性を持っている画家です。
でも、こうやってたくさんの作品を一度に見てみると、なにか歯がゆいというか。
行こうとしている方向はわかるし、その道も正しいのだけれど、その道はまだそうとう遠いぞ、という感じ。
ある絵の横に紹介されていた彼の文章、
「様式はなつかしい ー それは、現代が失ってしまったもののひとつだからです。
「現代」に入る前は、洋の東西を問わず人間は常に様式を持っていた。その時代その時代のものを作る人々を、まるごと支えていたような様式です。」
というのがすごく印象的でした。
様式という切り口は、彼の絵を見ているとすごく納得できる。なるほどとおもうのですが、
「ひとつの時代をまるごと支える様式」
というアイデアは、すこし図式的すぎるんじゃないかなという気もしました。というのは、絵を見ていて、その部分がもどかしいと思えたから。
まだスタイルが固まっていない、大学の卒業制作
<私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ
に、緊張感とか躍動感とか、そういう張り詰めたものを感じました。
そして、晩年の
<花火の日>

<出現>
の、絢爛で重厚な画面に、わたしはぐっと惹かれるものを感じました。
時代をまるごと支えるような様式が、どんなに堅固で荘厳であっても、結局それにおさまりきらない。そこに美がある気がします。
そのぎりぎりの破綻、そこをめざして、この画家は押し進んでいたように思いました。
いずれにせよ、享年38は早すぎる。まだ若く、才走っているようなところもあり、これからだったんじゃないかなぁと残念な気がします。
でも、
<出現>と<花火の日>は、迫るもののある、名画だと思います。