- 作者: 猪瀬直樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/06/25
- メディア: 文庫
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管直人が読まないみたいなので、私が読んでみた、というわけではないが、秋になると、言葉が恋しくなる。
ネットに溢れている‘便所の落書き’みたいのではなく、ちゃんとした言葉にふれたくなる。
今年は少し読書のペースが落ちたので、これから取り戻したい。
この本については、著者本人がコラムでふれているので全文はそちらで読んでください。
少し引用だけ。
大日本帝国の過ちは、国家戦略を欠いていたことだった。帝大法学部卒や陸軍士官学校卒というタテ割りの人材ではなく、横断的に人材を育成し、国家戦略を研究する機関が必要だった。
ということで、‘日本版国防大学’というべき「総力戦研究所」は
日米開戦前夜に泥縄式でつくられた。
ところが、その泥縄式で作られた研究所が、もし、日米開戦すれば日本は必ず負けるという結論を、その後の歴史の展開どおりにシュミレーションして、当時の内閣に提言までしたのだから、驚かざるえない。
いまも昔も、日本は国家戦略をおろそかにしている。タテ割り行政の弊害により、バブル崩壊後の日本は長年低迷してきた。それを打破したのが小泉政権だった。橋本政権で構想された経済財政諮問会議を機能させ、省庁横断的に国家戦略を打ち立てていった。
民主党の国家戦略局(法整備前は暫定的に国家戦略室)も、本来であれば、日本の国家戦略を考える機関にするべきだった。しかし、国家戦略室はまったく機能せず、司令塔を欠いた民主党政権は迷走した。
復刊された文庫版には、猪瀬直樹と勝間和代の対談があらたに収録されている。
1983年に書かれたこの本を読み、2010年に交わされたこの対談を読むと、しらずしらずため息が出る。
1983年でも、2010年でも、もっといえば、1941年でも、正しいことをいう人間はいつも正しいことを言っている。
ところが、どういうわけか日本の一般大衆は、‘大和魂’とか、‘格差社会’とか、実体がどこにあるのか分からない言葉に流されてしまう。
そして、その流れが激流になっているときには、
「あの・・・、すみません。そんなものどこにもないんですけど」
とかうっかり口にしたら、殺されかねないのだ。