南宋の青磁

 根津美術館の地図を見ていて、大田記念美術館から歩いてすぐだと気がついた。
 改装前、何度か訪ねたときは、あの美術館が、原宿と地続きとは想像さえしなかった。
 秋晴れの空の下、表参道をとろとろくだっていくのもここちよい。
 南宋青磁は「宙(そら)をうつすうつわ」と呼ばれたそうだ。
 空にはもちろん形がないが、もし空が形を選べるとすれば、玉壺春形瓶のようになったかもしれない。
 あるいは、輪花鉢か、蓮弁文碗か。
 米色青磁というものも展示されていた。
 「米色」という命名が、いかにも日本人らしい。「狐色」でも「土色」でも「枯草色」でもよさそうなものだが、そして現にそう呼んだ人たちもいたかもしれないが、結局、定着したのが「米色」だというのが、磨き上げられたセンスというものだろう。
 青い釉色に空を思うように、米色青磁の膚に米を思う。
 そのことだけで少し豊かな気持ちになれる気がする。
 庭を少し散策。
 意外なことに、銀杏はもう色づいていて、楓も樹によっては紅葉がはじまっていた。