その名は蔦屋重三郎

knockeye2010-11-14

 火曜日に見逃した、サントリー美術館の「歌麿写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」。
 この鑑賞には、先日読んだばかりの、田中優子の『江戸の想像力』が、ずいぶん援けになった。
 特に、第二章の「蔦重を生んだ<吉原> ― 江戸文化の発信地」では、狂歌連が出版した狂歌絵本が、多数展示されているなかに、『江戸の想像力』にも取り上げられていた、山東京伝の『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』の実物も展示されていて、‘京伝鼻’をした艶二郎の挿絵のページが開かれていた。
 狂歌だけにとどまらない、この‘連’という、とらえどころのないネットワークが、東錦絵や落語などの、現代にまで受け継がれる江戸の文化を生み出していったわけだったが、この‘連’というものに参加していた人たちが、後世に名を残そうと思っていなかったのは間違いないと思われるというのは、彼らの使っていた‘狂名’を見ていけばわかる。
 「酒上不埒(さけのうえのふらち)」、「大屁股臭(おおへのまたくさ)」、「普栗釣方(ふぐりのつりかた)」・・・。
 これらが江戸文化の礎を作った文化人たちの名前。ほかには、たとえば、「芝うんこ」とか。
 喜多川歌麿の絵に、虫にかけた色恋の狂歌をそえた『画本虫撰(えほんむしえらみ)』は、それぞれの歌を活字で展示してくれていたので、読んでいて楽しかった。
 もちろん、写楽歌麿の絵も楽しんだけれど、この展示では、文字情報が多くて、贅沢に時間をすごさせてもらった。
 東京ミッドタウンは、もうクリスマスの飾りつけ。
 檜町公園もイルミネーションで彩られていた。