スタンダード&プアーズが、日本の長期国債を格下げした、というネタは、もう新鮮味がないだろうが、昨日の日経ウェブに、スタンダード&プアーズの担当者のインタビューが載っていて、政府の財政健全化の目標など、
「あってないようなものだ」
と、手厳しいとはいえ、ちょっと溜飲の下がる思い。
『国家債務危機』という本の出版で、来日しているためもあるだろうが、先週は、ジャック・アタリについての記事をいくつか目にした。
ひとつは、ダイヤモンド・オン・ラインの大前研一、もうひとつは、週刊文春の鹿島茂の書評である。どちらも、
「過剰な公的債務に対する解決策は今も昔も8つしかない」
という指摘を取り上げている。
「増税、歳出削減、経済成長、低金利、インフレ、戦争、外資導入、そしてデフォルト」。
戦争とデフォルトは論外。低金利は、これ以上どうしようもない。外資導入は法人税、雁字搦めの規制、人口の減少を考えると望み薄。
もっとも望ましいのは、歳出削減に取り組みながら、経済成長を実現していくことで、小泉政権下の2001年から6年は、実際、長期の景気回復とともに、歳出削減が実行されていたのだ。
だが、麻生政権以降、官僚主導のばらまき政治に逆戻りしてしまった。思い出して欲しいが、麻生太郎は、天下りの禁止にさえ徹底的に抗戦したのだ。
格差社会だの、新自由主義だの、実態があるかないかわからない批判をする前に(誰がしているのか知らないが)、膨らみ続ける社会保障費を抑制しつつ、規制を緩和して経済を成長させていく、以上の戦略が、実際のところ、ありえたのかどうか考えてもらいたいものだ。
ぶっちゃけた話、格差社会だ、新自由主義だとわめいていた連中のいうことをよく聞いていると、つまり、「高度成長の昔に戻りたいよぅ」と、だだをこねているだけだと思う。ほとんどモンスタークレイマーである。本気で高度成長のころに戻れると思っているのだとしたら、頭がおかしい。
時間が残されていない、今となっては、増税しかないと腹をくくるとしても、先のスタンダード&プアーズの担当者インタビューにもあったのだけれど、
「景気低迷時に増税すれば、マクロ経済にはマイナス」
になる恐れがある。現に、橋本政権時代、消費税を2%あげたときでさえ、税収が減っている。
菅直人は、消費税さえ上げれば、何もかもうまくいくと考えているフシがあるが(なにしろそういうことに疎いらしいし)、綿密な制度設計をしなければ、増税という最後の希望さえ消え失せてしまうかもしれない。国民の負担は増えたが、国の税収は下がったという悪夢に陥りかねない。
与謝野馨の「行政改革をしなければ、増税できないというのは、一種の逃げ」という発言を聞いていると、どうやら、その悪夢がほとんど現実になりそうなのである。
ひとつの案だが、大前研一の提言しているように、資産課税へシフトするのも、現実味があるのかなという気がする。
ちなみに、マスコミが報道していた「国債発行額44兆円」は、高橋洋一のこのコラムによると、過剰計上だそうで、このあたりも専門家に聞かないと、うっかり官僚にだまされてしまう。
そういえば、最近、44兆円という数字は見なくなったか。