理解できない

 民主党の若手議員16人が、党会派から離脱の意向を表明したについて、菅直人首相は、
「まったく理解できない行動だ」
と言った。
 わたしは、別に、政治評論家でも、専門家でもないので、その若手議員達の行動の、背景や影響について、何かをいおうとも思わないが、ただ、ひとりのおとなとして、常識的なことは言わせてもらってもいいわけだ。
 菅直人には、若い人たちがあえて起こした行動に対して、かれら16人にとっての大先輩として、
「理解できない」
としか言葉がないのか?
 それが、民主党を立ち上げ率いてきて、いま、国民を導いていこうとしている人が、若い人に対して言う言葉のすべてだとしたら、あまりにも官僚的で誠意がない。
 別に、これは、政党にかぎらず、社会のどんな組織でも、こうした下からの抗議、反発といった動きがあったとき、上司が今回の菅直人のような反応しかできないとしたら、私が、その当事者であろうとなかろうと、おそらく、その上司に失望しただろうと思う。もっとはっきり言えば、見限るだろう。
 ‘硫黄島の軍手’のときにも指摘したことだが、菅直人には、自分がどういう立場にいるのかという自覚が、決定的に欠如している。
 トップが「理解できない」と言ってしまった時点で、この16人の退路は断たれてしまったことにならないか?
 小沢一郎の処分の仕方を見ていても思うことだが、決断を下すときは、権力のトップにいる自覚をもってもらいたい。
 冷酷にならなければならないときもあるだろうし、できない忍耐を強いられることもあるだろうが、どういう場合にせよ、首相の決断なのだから、それが今後の国の行方を左右することになる自覚を、この菅直人という人が持っていると、思ったことがない。
 政治や経済については素人かもしれない、一般市民でも、何らかの組織に関係していない人は少ないのだし、この菅直人のような上司に国を任せられるかどうか、自分の経験から判断できると思う。
 一般市民にとって、理解できないのは、この若手16人か、それとも、菅直人自身か、どちらだろうか。