田中角栄と電源三法

 昨日紹介した、加藤祐子の‘JAPANなニュース’の6月14日の記事、読んでいただけただろうか?
http://dictionary.goo.ne.jp/study/newsword/wednesday/20110614-01-1.html
 その記事にリンクされている、ニューヨークタイムズの記事
原発依存を助長する日本の文化」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/7514
は、私たちの国が抱えている闇の、かなり深くまで突き刺さる鋭い指摘だと思う。
 ここに指摘されている‘日本の文化’は、すくなくとも戦後から現在に限定すれば、たしかに、正しいといわざるをえない。

 現金の流れの大部分は、政府交付金の洗練された制度である電源三法の所産で、これは日本の原発環境を形作り、公共事業を戦後もっとも手強い政治派閥形成に利用した、当時の権力者田中角栄首相が、1974年につくった法律だ。

 この記事に書かれている田中角栄のやりかたこそ、ゴルバチョフが‘世界で最も成功した社会主義’と呼んだ構造そのものだと思うべきなのだろう。
 野口悠紀雄が指摘しているように、高度経済成長は、本質的に‘格差’を生み出す。
 その格差への不満を和らげるために、田中角栄が採用した、この記事のような手法が、ムダな公共事業に金をつぎ込むことで財政を悪化させ、労働人口の流動化を阻害することで世代間の雇用格差を生み、既得権益をめぐる政官財の癒着を強固にすることで、時代にあった産業構造の転換を不可能にした。

「『麻薬』という表現がいいかどうかはともかく」と、佐藤氏が言う。「一回やったらもう絶対に2回目がほしくなるんです」

 昨日紹介した、米倉経団連会長の発言は、菅直人
「『菅の顔を見たくない』という人も国会にはいる。それならこの法案(再生可能エネルギー促進法案)を通した方がいい」
という発言を受けてのものだった。
 米倉という人も、あまり‘キレる’タイプではないようで、きっちり挑発に乗ってくれたわけだった。
 ネット上にも、菅直人おろしの背景がだんだん見透かされてきているみたいで、ダイヤモンドオンラインの上久保誠人
菅首相「居座り」の意外な効果!? 」
http://diamond.jp/articles/-/12819
と題して、与党も野党も、菅直人を下ろしたあとの構想がまったく示せないために、ひとり脱原発政策を推し進める菅直人が、イニシアチブを握った現状を分析している。
 しかし、私に言わせれば、自民党は、菅直人以後を‘示せない’のではなく、隠しているにすぎない。
 自民党幹部と米倉経団連会長の発言がほとんど一致していることと、以前にも書いた、例の注水中止問題をめぐる、東電と自民党の連携プレーを見れば、自民党が何を目論んでいるか、そして、原発事故で帰宅できない多くの人がいるいま、それを口に出せずにいることもよくわかる。
 トップで紹介した記事を読んで、田中角栄電源三法によって、いわゆる‘原子力ムラ’に流れ込んでいるカネの膨大さを想像してほしい。
 彼らは、被災者を人質にして、電力の自由化を阻止しようとしているだけなのである。
 政権交代以降、迷走をつづけてきた民主党だが、いまようやく、ボスキャラのひとつに対峙している。
 私の希望としては、もう一度結集して、電力の自由化を勝ち取ってほしいと思う。
 黒川浩助・東京工業大学特任教授は、日経WEBのインタビューで菅直人ソーラーパネル一千万戸構想について訊かれて
「太陽光の潜在力はもっと大きい。2030年の日本の電力総需要を想定して、最大限でその8倍は見込める。」
と答えている。