インターネット・オブ・シングズ

 週刊「東洋経済」に、前グーグル日本法人名誉会長、村上憲郎のインタビューがある。
 これまでの日本の電力政策の根本は、いわゆる「安定供給」体制。たとえ、年に3日、合計10時間にすぎなくてもピーク時に電力不足を起こさない選択。そのために、2倍料金を払っている。
 米国は'00年代初頭にカリフォルニア州などの大停電を経験したが、ピーク時以外は発電設備が余るような、安定供給体制は選択せず、ピークの高い需要曲線を平らにならしていく方向に進んだ。それが、デマンドレスポンス。
 さらに、オバマ政権のグリーニューディールの一環として、通信機能を持った積算電力計「スマートメーター」を導入して、機械的にピークカットしようという、「デマンドレスポンス2.0」も動き始めている。

もし「スマートメーター」をひとつ設置するのに、2万円かかるとしたら、100万世帯の導入に、200億円かかります。
 これにより、ピークのときに各戸1kw節電すれば、全体で100万kwカットできる。これは原発一基分です。
 建設だけで、2〜3000億円かかる原発の発電能力が、200億円でまかなえる

 スマートグリッドは「インターネット・オブ・シングズ(Internet of Things)」ともいい、最終的に、電源のある機器はすべてネットにつながっていくのです。
(略)
スマートグリッドから日本が置いてけぼりになると、家電、自動車、住宅といった関連端末業界のひとたちすべてが世界から置いてけぼりになる。
 ですから、こういった産業の関係者と手を組んで普及を目指しています。
(略)
今後は「スマートメーター」が重要な機器になると多くの人が気づき始めている。NTT、KDDIトヨタ自動車などが関心を示しています。

 バブル崩壊以降、日本は、OSで負け、金融で負け、スマートグリッドに関しては、すでに後進国と目されている。
 1970年代に、田中角栄が築いた利権の構造を死守することを、政治も、官僚も、マスコミも暗黙の至上命題としてきた。
 蓄えた富は、産業構造の転換に向けられなければならなかったのに、そうはせず、公共事業というかたちで、既得権益の身内でカネを回すことを選んだ。
 経済が破綻したのはむしろ当然だと思われる。
 結果として、私たちの生活は、バブルを頂点として、あとは沈んでいく。

発電に原発がいいのか、太陽光がいいのかと議論している人がいますが、その議論にはまったく生産性がない。

と、村上憲郎も言っている。
 肝要なのは、発送電分離なのである。
‘太陽光か?原発か?'みたいな議論は、電力の自由化を阻止するための仕組まれた議論かと疑いたくなる。
 報道によると、
民主党の玄葉政調会長が、特例公債法案の成立の前提となる民主、自民、公明3党の政策協議がまとまった後に菅首相が辞意を表明しなければ、自ら辞任すると自民党側に伝えていることを明らかにし」
て、話題になっているが、冷静に考えて、菅政権のもとで‘政策協議がまとまる’なら、菅直人が辞める必要はないじゃないかと思うが、どうなんだろう?
 この国の政治家の意識は、菅直人が辞めるか、辞めないかに集中してしまっている。
 大震災からの復興や、今後の電力政策に危機感を持っている政治家がひとりでもいるのか暗澹とせざるえない。