渋谷で黒岩祐治神奈川県知事の講演会があったので、ちょっとのぞいてきた。
今日の渋谷はひどかった。井の頭通りあたりの交通信号がフリーズしていて歩行者が立ち往生していた。ニュースになるかどうか知らないが、‘もうこの国はダメかな’と思わせる何かだった。
太陽光発電の普及に「圧倒的スピード感」を強調する黒岩知事だが、菅政権の崩壊もあり、今後の見通しはどうなっているのかというあたりを聞いてみたかったのだ。
話を聞いて気がついたけれど、黒岩知事はまだ就任後4ヶ月半しかたっていない。蜜月も蜜月真っ最中で、まだ当選の高揚感を持続していると見えた。野田政権がどちらに転ぶのかもまだわからない状況で、一県知事にこれまでこのブログで書いてきたようなことどもを問いただしてみても、見当違いかなという気がして、思いが乱れた。
最初に質疑応答に立った人が、再生可能エネルギー促進法案が実際に施行されて、買い取り価格が電気料金に上乗せされた場合の影響について質問していたが、それに対する黒岩知事の答えは、事故の補償や設置地域の住民にばらまく補助金などもふくめた原発のコストに比べたとき、再生可能エネルギーのコストが高いとは言えないということだった。
あの場にいた多くの人は、あるいは、日本人の大多数も、たしかに脱原発を望んでいると思うし、また、黒岩知事自身がそのときも少しふれたのだが、いまだに福島の事故が終息していない現状では、脱原発は理念ではなく「いま目の前にある事実」なので、確かにそのコストの比較には異論はないのだ。だが、問題は、原子力損害賠償支援機構法で、原発事故の補償額も電気料金に上乗せされ、その上再生可能エネルギーの買い取り価格まで電気料金に上乗せされることになったときは、家計と産業への打撃は無視できない。経済を冷え込ませるおそれがある。
そもそも日本の電気料金は諸外国に比べて高すぎるといわれている。米国のほぼ2倍。みんなの党の浅尾慶一郎が国会で質問していたが、韓国のほぼ5倍もする電気料金を日本人は払っている。まず、この内容を質してみるべきではないかと思う。
また、ひと言に「買い取り価格を上乗せする」というが、その算出方法次第では、電力会社の利益を殖やすだけという結果になりかねない。第三者機関を設置するといっても、原子力関連だけで50もの天下り法人がある現状で、第三者とは果たして誰なのか。また、天下り法人をひとつ加えるだけの結果にならないだろうか。
こうして考えてくると、やはり、もっとも原則的なこと、競争原理を働かせることが、必要不可欠だと思えてくる。
そして、そのためには、発送電を分離して、あらゆる発電事業者が平等に競争できるフィールドを整えることがまず何よりはじめに取りかかられるべき施策だと思う。
送電網が解放され、競争原理が動き出さないことには、太陽光発電などの再生可能エネルギーが普及していくのは難しいだろう。
にもかかわらず、自民党、民主党双方が、電力業界に支持母体を持っているために、政治が発送電の分離に本気で向かっていかない。
先日来、何度か‘電力会社ではなくガス会社が、次世代エネルギーの基幹となるべきだ’と書いてきたのは、ガス会社のインフラの信頼性と、エネファーム、エコジョーズなどの、家庭用コージェネレーションシステムの先進性、そして非在来型ガスの将来性などから、エネルギー全体に視野を広げれば、ガス会社の発展が競争原理を発生させうると思っているからである。
くりかえしになるが、太陽光パネルなどの自然エネルギーと、都市ガスの「スマートエネルギーネットワーク」を組み合わせれば、すくなくとも一般家庭で消費するエネルギーには、電力会社がいらなくなる未来もみえてくる。
もちろん、そのためには国民の理解と政治的な戦略が必要だが、いずれにせよ、東京電力のいいなりにどんどん電気料金を上げていくといった愚は避けるべきだろう。
就任後まだ4ヶ月半では、まだまだこれから紆余曲折があるに違いないが、黒岩知事には期待しているし応援している。