先月読んだ本の話。
- 作者: チェーホフ,神西清
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/05/16
- メディア: 文庫
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この本は、「チェーホフの短編に就いて」と「チェーホフ序説」という、神西清のふたつのチェーホフ論が貴重だ。
引用。
「神あり」と「神なし」との間には、非常に広大な原野が横たわっている。まことの智者は、大きな困難に堪えてそれを踏破するのだ。ロシア人は、この両極端のうちどっちか一つは知っているが、その中間には興味を持たない。だからロシア人は普通まるっきり無知か、乃至は非常に無知なのだ。ーーーーーそんな意味のことが、チェーホフの『手帖』に書いてある。これは彼のいわゆる「唯物論」的態度の、おそらく最も完璧な表現である。
ここでの「ロシア人」論を、‘私には関係ない’と思える人は、チェーホフの言うとおり、まるっきり無知か、非常に無知かのどちちらかだろう。
こんな挿話がある。 ーーー トルストイが「カント的な見方で」不滅を認めて、人間も動物もある神秘な原理(理性、愛)によって生きていると主張したのに対し、チェーホフは、その原理とやらは何かどろどろしたジェリーの塊りみたいに思えてならない、じぶんの自我や意識がそんな塊りと融合するのが不滅なら、平に御免をこうむると言い放って、ヤースナヤ・ポリャーナの聖者を唖然たらしめた。1897年のはなしである。
表題作をふくめ、9編の短編が収録されている。私は、「大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ」、「富籤」が好き。
- 作者: マルグリット・ユルスナール,多田智満子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1984/12/01
- メディア: 単行本
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「美あり」と「美なし」の間にも、やはり広大な原野が横たわっているか。