「宇宙人ポール」


 みなとみらい横浜の109シネマズで、「宇宙人ポール」。たぶん、字幕を監修している町山智浩がアメリカで拾って持ってきた映画だと思う。
 ちなみに、「電人ザボーガー」を観た映画館もここだった。なかなかスジのいい映画館である。
 この「宇宙人ポール」、MovieWalkersの‘観て良かったランキング’で、まさかの堂々一位を獲得している。
 なので、あえて映画の紹介に努めなくても、きっとあちこちで話題になっているだろう。「キックアス」とか「ハングオーバー」とかを見た人はきっと観にいくだろう。
 ということで、あとは、自由連想でとりとめなく書く。
 1997年に公開された「マーズ・アタック」では、あのちょこまかした火星人たちのモデルは日本人だという説があった。アメリカは、日本の経済的な侵略に潜在的な脅威を感じているというのだった。遠い昔だ。
 その説を頭の片隅において観ていると、この‘ポール’とファーストネームで呼ばれる、えらくフランクなエイリアンは、もしかしたら、アメリカ人自身ではないかと思えた。ハリウッド映画のアメリカ人、彼ら自身が「アメリカ人ってこうだ」と思い描いてきたアメリカ人は、いまやアメリカ人自身にとって、エイリアンのように遠くなってしまったのかもしれない。
 主人公ふたりが、SFオタク(捜査官には‘nurd’といわれていた)の、なぜかイギリス人であることも、その印象を深めてくれる。彼ら自身が、外国人という語意での「alien」だというギャグは、映画の冒頭ちかくで2度ほど使われている。それに、彼らが実際に出会うアメリカ人は、あまり好もしい人物ばかりではないのだ。
 そう観ていくと、ボスキャラのあっと驚くキャスティング(驚きすぎて目を疑ってしまい、確信が持てるまで時間がかかった。私だけではなかったみたいで、観客席が異様なほど無反応だった)も、価値観の転変を示しているともいえる。単にサプライズともいえる。
 ちなみに1979年公開の「エイリアン」で舞台となった宇宙船は、Wikipediaによると、日系企業の所有という設定だったらしい。シガニー・ウィーバーの口に突っ込まれる雑誌は、山口百恵が表紙の平凡パンチだったそうだ。2010年公開の「月に囚われた男」の主人公が、韓国企業に務めていることはすでに書いた。