「ハリウッドではよく‘子ども、動物との共演は避けろ’と言われてきたよね。今の僕ならそれに‘タイムトラベルは避けろ’と言うよ」
パンフレットに載っているウィル・スミスのインタビュー。
「MIB3」にかかわった脚本家6人の1人、エイタン・コーエンはニューズウイークのインタビューに
「ホンモノのタイムマシンを完成させて、未来で脚本を読んでくる方が手っ取り早いんじゃないかと言い合ったくらいさ」
と語っている。
ウィル・スミスとバリー・ソネンフェルド監督のどちらの完璧主義がより問題だったのかは知らないが、「MIB 3」の制作は難航し、ソニー・ピクチャーズの幹部の間では、2億1500万ドルを超した制作費の、損金処理が現実的になってきていた。
「間違いなく苦労したし、もっと楽なやり方もあったと思う。」と、先のコーエンは続けて「でも‘完璧を目指さなきゃ映画を作る意味はない’というスミスの姿勢に全員が従った。そこまで立派な労働倫理を見せられたら、なかなか反論できないよね。」
プロデューサーのウォルター・パークス
「『MIB』は不思議な才能の集まりだ。エイタンは別として、主な作り手は小道具担当まで1作目から同じ。15年かけて3本の映画を一緒に作った仲間は家族みたいなものだ。」
本来、ただの冗談にすぎないことにここまで真剣にやってくれなきゃハリウッドの意味がない。その意味では、この映画自体が、ハリウッドに熱のあった時代へのタイムトリップと言えるかもしれない。
話はわき道にそれるけれど、最近、そういう懐古趣味というか、古き良きアメリカ(そんなものがあったのかどうかはともかく)を懐かしむみたいな傾向の作品が目に付くようになってきた。
たとえば、アカデミー賞を受賞した「アーチスト」なんて、もろにそうでしょ。それに、ウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」も‘タイムトラベルもの’で、こちらがトリップするのは1920年代のパリ、スコット・フィッツジェラルドがバブルを謳歌している。
「MIB 3」で、ウィル・スミス演じるJが、若き日のKに会うために飛ぶのは1969年のアメリカ、ニューヨークメッツが優勝し、アポロが月面に着陸する。なんかそれだけで泣けてくるアメリカ人もいるのではないか。
個人的には、今回の特殊メイクのなかで、一番ツボにはまったのは、アンディ・ウォーホルだ。画面に映っている間ずっとクスクス笑っていた。ヨーコが訪ねてくるのだが、あれが草間彌生だったら椅子から転げ落ちたと思う。
タイム・トラベルの困難を乗り越えていい出来になってると思う。こころにくいのは、タイムトラベルのシーンにもきっちり小ネタをはさみこんでくるところ。サイトのトレーラーでみると、メグ・ライアンの「ニューヨークの恋人」みたいかなと思うのだけれど、同じことをやっても、このチームは笑わせる。
3Dでもう一回見てもいいかなと思うくらい。最近のソニー製品のなかではこれが一番の傑作かも。