消費税増税法案成立へ向けて小沢一郎の同意をとりつけることに失敗した野田佳彦は、今度は自民党との連携を目当てにして、なりふりかまわぬ内閣改造を行った。‘なりりかまわぬ’というのは、自ら掲げた公約を踏みにじる政策実現のために、その公約を掲げて打倒した政権の担当政党と共闘しようという、完全に国民をバカにした蛮行を形容するには、いささか弱いかもしれない。
その内閣改造で解任された小川敏夫前法務大臣が、
退任記者会見で、陸山会事件を担当していた検事が虚偽の捜査報告書を作成した問題に触れ、この検事らを対象に捜査を進める最高検トップの検事総長に対する指揮権発動を先月、野田佳彦首相に相談していたことを明らかにした。首相は了承しなかったという。
と、日経の記事にあり、
最高検は報告書を作成した田代政弘検事(45)=現法務総合研究所=らを不起訴とする方針を固めており、指揮権発動は田代検事の起訴を促すことを指すとみられる。
報告書は、民主党の小沢一郎元代表に対し検察審査会が1回目の「起訴相当」議決をした後の2010年5月、田代検事が元秘書の石川知裕衆院議員を聴取して作成。
元代表の関与を認めた理由として「検事から『うそをつくようなことをしたら、選挙民を裏切ることになる』と言われたことが効いた」などと記されていたが、実際はこのやりとりはなかった。〔共同〕
と続いている。
司法の権力を握っている検事が、証言を捏造して、立法府の国会議員を無実の罪に陥れようとしたことが明らかであるのに、最高検がこれに対してどのような処置も講じず、当の検事を不問に付そうとしているとき、行政がここに介入すべきなのは当然だと、私には思える。
そうでなければ、権力の暴走を防ぐために講じられている三権分立の意味がなくなってしまう。
問題は、野田佳彦が、なぜこれを了承しなかったかだが、それを考えると、小川敏夫が記者会見で突然これに言及した意味がわかる。
彼としては、野田佳彦という現首相が、証言を捏造までして一人の政治家を葬り去ろうとした検察の暴走を、すくなくとも手をこまねいて看過したということを、退官にあたってひとこと証言しておきたかったのだろう。
このことに、大したインパクトがないのは、ことがほぼ大方の推察通りだったからではないだろうか。
だが、そうした推察にひとつの証言が添えられた意味は大きいと思うべきだ。
一国の首相として、これほどあからさまな人権の侵害に無頓着だという点で、わが国の首相はムバラクとかフセインと肩を並べているということなのである。