愛国という快楽

knockeye2012-08-19

 こないだ紹介したSAPIOには、「韓国『従軍慰安婦の嘘』に決着をつける」という特集記事もあり、上の本を書いた西岡力の投稿もあった。
 日本のネトウヨのカウンターパート(?)ともいうべき存在が韓国にもあって、まさかと思うような嘘を声高に連呼している。これに、実際の政治がひきずられるべきではないのだが、韓国はずっと「反日無罪」という、反日ありさえすれば何やっても許されるという、韓国でしか通用しない常識が今もまかり通っているので、現実の政治も国民感情もこれに重なる部分が大きいのかもしれない。韓国が国際社会で責任ある立場に立つためには、是正されるべきなのだが、国内政治の力学として至難の業であるようだ。
 李明博大統領は「日本の国際社会での影響力は以前ほどでない」と語っている。それはシンプルファクトにすぎないのだけれど、だからといって、日韓関係を損なってもかまわないと判断する根拠がなにかあったのかは、すこしわかりにくい。任期の最後の年ということもあるし、あるいは、実兄の李相得の逮捕がなにか関係しているのかもしれない。
 この事件まで、東アジアのバランスは、日米韓、中国と北朝鮮、ロシアという三つの勢力に分かれていたはずだが、日本の国力が弱まり、どこまで膨張するかと思われていた中国の勢いも失速、相対的に韓国が勢いを増してこのバランスが崩れたということもいえるだろう。
 尖閣諸島をめぐっても、香港の活動家が上陸して日本に逮捕されるという事件があったのだが、これに対する中国の対応を見ていると、反日デモを極力抑えようとしているように見える。つまり、中国は中国で、こうした‘愛国奴’の始末に頭を悩ませているようだ。
 こうした‘愛国奴’が、日本では‘ネトウヨ’と蔑まれているのは、実に喜ばしいというべきだろう。韓国では逆に英雄視され、中国では危険視されていると見える。
 そして、韓国でも中国でも、おそらくは日本でも、政権の交代期にかかっていることも見逃せない。韓国でその影響がもっとも大きいように見えるのは、日本の軍部の暴走、中国での文化大革命など、こうした‘愛国’が行き着く先の悲惨を経験していないためでもあるかしれない。
 前にも書いたかもしれないが、国なんて愛の対象にすべきものではない。愛国なんてことは、ただのフェチシズムであって政治ではない。ほんとにばかげている。いずれにせよ、私は国なんか愛するつもりはない。
 しかし、この対処次第では野田政権に再浮上の可能性がでてきているから皮肉だ。まあ、ちゃんと対処できればだけれども、とりあえず国際司法裁判所(ICJ)に提訴するのはそうするしかないのだが、従軍慰安婦問題に関してアムネスティや米議会に説明するとか、オバマクリントンを仲介にたてて会談を設けるとか、その先になにか手を打てれば、支持が持ち直すかもしれない。
 一方、鳩山由紀夫が、野田佳彦が首相交代しないなら離党すると言い出している(そもそも自分が投げ出したんだけれど)。これがまた変な具合に作用する可能性もある。鳩山由紀夫に離党されたくはないだろうから、メンツを立てて野田のかわりに前原が立つ可能性もあり、そうなると、中国がうれしくないかもしれないし、今よりすこし反日になるかもしれない。