もしかして‘褒め殺し’?

knockeye2013-01-16

 上久保誠人が面白い記事を書いている。‘すごいぞぼくらの安倍政権’みたいな感じ。
 ‘「安倍人事」を徹底解剖!’っていうけど、それも、このひとの‘読み’にすぎなくて、じっさい、他の報道では、安倍、石破、麻生の三人が、人事をめぐってぎくしゃくしているとも伝えられている。
 もちろん、それもそれで‘読み’にすぎないが、しかしながら、この安倍政権は‘第二次’なんだし、‘第一次’の時と比べて、そんなに大きな変化があるというふうには見えないし、この‘第二次’の陣容がそんなにすごいんなら、‘第一次’のときももうちょっと何とかなったんじゃないかなと思っちゃうんですけどね。
 はなっからけちをつけるつもりはないけれど、そんなにも期待はしてない、というあたりかな。
 でも、この記事の何がおもしろいのかというと、よく読んでいくと

公共事業や円安の恩恵を受ける企業は、業績悪化に苦しむ斜陽産業だ。しかし、既に日本は700兆円を超える財政赤字を抱えており、その上でなお、借金を増やすことになる。

 
とか

「古い公共事業がどうとか、いつまでも世間に生意気なことを言わせていてはだめだ」と発言するなど、二階氏は実質的に族議員の中心として動いている。

 ちなみに、この二階俊博は、2009年、実弟と公設秘書が「政治資金規正法の収支報告書虚偽記載」の疑いで東京地検特捜部に参考人聴取されたあの人。

今、自民党本部は陳情に訪れる業界団体の自治体関係者が押しかけて、大賑わいだ。党政調会の各部会では、族議員から公共事業の上積みを求める大合唱が起きている。国土交通部会では、民主党政権で止まった八ッ場ダムスーパー堤防、道路整備の再開を求める声が相次いでいる。農林部会では、補正予算の農林関係の総額が1兆39億円となることが決まったが、農水族議員の要求により1日で100億円以上増額となった。

 緊急経済対策の公共事業にも、高速道をつなぐという事業、農業農村整備事業、病院の耐震化や保育所整備などのハコモノ事業など、必要かどうか疑わしいものが含まれている。安倍首相は「古い自民党から脱皮をした」と強調するが、族議員・業界・省庁の要求を精査できているとは思えない。

とか

諮問会議が族議員・業界・省庁を抑えるのは難しい。諮問会議のキーマンである麻生副総理は、基本的に財政拡大論者だ。公共事業が尽きて、斜陽産業が再び危機に陥る時に、麻生副総理が斜陽産業を切り捨てて、産業構造転換を決断するのは難しい。むしろ、公共事業の継続、日銀に国債の更なる引き受けを要求するのではないだろうか。

とか

産業競争力会議の民間委員の中で、唯一政策立案プロセスの現場を熟知する竹中慶大教授は、「小泉構造改革」へのアレルギーがある麻生副総理の反対で経済財政諮問会議の委員に入れなかった。産業競争力会議はバラマキを止める政治力を持ちえないだろう。

とかの、後半部分の悲観的観測の方がずっと説得力がある。
 はじめ、麻生太郎を「超大物」と呼んで

「超大物」の政治力で財務省と党内の緊縮財政派を抑え込み、財政拡大を断行して経済危機を乗り切るというのは、小渕恵三内閣における宮澤喜一元首相の蔵相起用を連想させる。

と書いているのだが、‘小渕恵三内閣における宮澤喜一元首相の蔵相起用’がわたしに連想させるのは、今にいたって国の財政を苦しめている例の‘ワニの口’である。

 小渕恵三は当時、「死刑になってもおかしくない」ともらしていた。これについては複数の証言がある。
 こうしてみていくと、案外この上久保さんの文章、‘褒め殺し’なのかもな、と思って、ちょっとにやにやしている。


 ただ、いわゆる‘オブチノミクス’だが、勝間和代は、‘日銀が歩調を合わせて金融緩和を行っていればうまくいっていたかも知れない’とか言っていたように記憶している。日本の首相は権限が弱すぎて総合的なプロデュース能力を発揮できないきらいがある。
 くりかえしになるけど‘けちをつける’つもりはないので、第一次のときの反省を踏まえつつ、頑張っていかなあかんなと思てます。