福島菊次郎展

knockeye2013-08-24

 この週末から開催されている、日本新聞博物館の「福島菊次郎展」を観にいった。
 戦後、これだけの事件が日本で起こっているのに、実際、これを写真に残せたのは、福島菊次郎ただひとりかという思いすらする。
 とくに、広島の中村さん一家を追い続けた写真と、三里塚闘争の写真は、わたしのようなのが、いつのまにか気安く受け容れてしまっている,この国の政治のウソをみごとに引き剥がして、真実を見せてくれる。
 役所広司が主演したあさま山荘事件の映画では、機動隊はジュラルミンの楯だけで戦ったことになっていたが、おいおいライフルかまえてんじゃん!なんだよ。きっちり写真に写ってる。
 先々週、オリバー・ストーンが広島にきて、日本は主権国家としてアメリカに向き合うことをしてこなかったといい
第二次世界大戦後、日本はすばらしい文化、すばらしい映画、すばらしい音楽、すばらしい食文化を示しました。けれども、私はただ一人の政治家も、ただ一人の総理大臣も、平和と道徳的な正しさを代表したところを見たことがありません。
 あなたたちはアメリカの衛星国であり、従属国に他なりません。あなたたちは何のためにも闘っていない(you don't stand for anything.)。」
と言ったそうだ。
 そのことばをこの福島菊次郎の写真が裏付けている。
 この国の官僚たちは、戦時中は国民を平気で殺し、戦後は彼らに抗議し闘う国民たちを見殺しにしてきた。広島では、原爆の犠牲者たちの遺体を、アメリカのABCCに差し出し、三里塚では、農民たちが立木に針金で自分たちの体を縛り付けて抵抗すると、平気でその根元をチェーンソーで切り倒した。農民たちは木に縛り付けられたまま搬出された。
 オリバー・ストーンが「あなたたち」というとき、それはもちろん、この農民たちを指してはいない。「あなたたち」と呼ばれるその「わたしたち」は官僚の側にいる。それは、政治の力で官僚を制御できない「わたしたち」のことなのだ。
 福島の汚染水漏れの問題も、参院選が終わってから発表されている。しかし、それが参院選前に発表されていたとして、大きな影響があったかどうか分からない。このような状況下で、自ら世界中に原発を売り歩く総理大臣が、「平和と道徳的な正しさを代表」していないのは明白で、こんな状況で、なお原発推進などと口にできる人間は、骨の髄から官僚主義者である。
 今回の写真展で、別の意味でもっとも印象的だったのは、三里塚で談笑している警察官と機動隊の姿かもしれない。三里塚の朝日を浴びて、農民や学生を打ち負かす期待にわくわくして、勝利の笑みを浮かべている。