「トランス」「2GUNS」「フローズン・グラウンド」

knockeye2013-11-01

 「トランス」、「2GUNS」、「フローズン・グラウンド」、今日観たばかりの映画、とっくに観たけど書いてなかった映画などについて、まとめて書くのは、今日、レイトショーで「2GUNS」を観て、なんつうのか、つまりこういうのが小林信彦のいうB級映画(誉め言葉)なのかなって、出てる役者はデンゼル・ワシントンに、「テッド」のマーク・ウォールバーグと贅沢なんだけれど、それ以外は徹底的に低予算、舞台はメキシコとアメリカの国境付近で、最後に牧場で決闘するあたり、西部劇の血筋が10メートル先からでも見分けられる。
 それに、ポーラ・パットンが、クラッシーとは間違っても言えないけどゴージャスな女っぷりを振りまいていてそれだけでも寿命が延びる感じ。
 もとはアメコミなのかな。検索すると、そういう感じの絵が出てくるので。
 デンゼル・ワシントンは「フライト」を見てから、私の中では、さんまさんとかぶるようになってきていて、いい男なんだけど、ペーソスがあって、頭がよくて、人がいいけど、女にだらしない、みたいな。「フライト」はさんまさんでリメークしたら絶対面白い。
 今度のも、マーク・ウォールバーグとの掛け合いがみどころのひとつ。このふたりに共通しているのは「いい人」感で、「いい人」って、やっぱりひとつの才能だと思う。見た瞬間「いい人」だから、このふたり。
 トロント・ブルージェイズ川崎宗則が人気になったりするのもそういうことなのかなとか思う。「いい人」は繕えないし、案外、伝わるってことなんでしょうか。

 「トランス」の監督は、「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル。イギリス映画らしい凝ったつくりで、たとえば、冒頭、絵画の盗難についてのアウトラインがジェームズ・マカヴォイのセリフで語られるんだけど、それは観客に対する説明のようでいて、じつはそうじゃないことが後で分かる。ジェームズ・マカヴォイの視線の先に人がいたわけ。
 最初からそんな具合で、記憶と事実の場面の使い分けがみごとで、いろんなことがだんだん分かっていく感じがスリリング。
 でも、‘bring it to me’のあのメールは可能なんだろうか?。なんか不可能な気がする。あれがなくてもメインプロットに無理はないと思うのだけど、たぶん監督があれを入れたかったんだろうな。わたしが気になったのはそこだけ。
 それから、美術が好きな人にはいろいろな名画がでてくるのもたのしい。ジェームズ・マカヴォイが失われた記憶の中から絵の隠し場所を探そうとしてまぎれ込む建物は、ル・コルビュジエのロンシャンの礼拝堂だった。
 それでここについでに書いておくと、今、上野の国立西洋美術館で開催中の「ル・コルビュジエと20世紀美術」という展覧会も観にいった。国立西洋美術館自体がル・コルビュジエの設計で、それを根拠にあれを世界遺産にしようという運動があるらしい。でも、聞くところによると、もともとのル・コルビュジエの構想は、予算の都合で大幅に縮小したくせに、その後で増築してるからね。どうかなと思うね。
 ル・コルビュジエは画家としてはたいしたことにはならなかっただろうと思う。ほとんど、フェルナン・レジェだし。だけど、その世界を建築に発展させた妄想で、フェルナン・レジェを軽く凌駕している。
 国立西洋美術館はよく見ると、表階段の柱のかたちが、ユニテ・ダビタシオンのピロティーにたしかに似ている。
     「2GUNS」が‘西部劇’、「トランス」(これが映画としてはいちばん出来がいいと思うけれど)が‘ミステリー’だとすると、「フローズン・グラウンド」は‘実話’なんだけど、実話がいちばんえげつない。
 ジョン・キューザックが実在の殺人鬼を、ニコラス・ケイジが、それを追い詰めていく警察官を、バネッサ・ハジェンスが殺されかける娼婦を演じてます。
 ジョン・キューザックニコラス・ケイジの共通点は、どちらもチャーリー・カウフマンの映画に主演していること。「マルコヴィッチの穴」、「アダプテーション」、どっちも面白かった。
 バネッサ・ハジェンスは「スプリングブレーカーズ」の人。ビキニに目出し帽かぶって拳銃ぶっ放すという、「けっこう仮面」かという映画でしたけどね。
 「フローズン・グラウンド」は、ニコラス・ケイジが出てるから観ただけだけど、わたしとしてはアンカレッジの町の雰囲気だろうな。アンカレッジは冷戦時代、航路の中継地点として少しは賑わっていたはずだけれど、そういう、昔賑やかだったところが、少しさびれつつあるっていう町が好きで。
 そういう意味では、ニコラス・ケイジ船越英一郎で、アンカレッジが冬の日本海という、ご当地二時間ドラマみたいなつもりで観にいく映画でしょう。おなじ実話をあつかった映画としては「凶悪」のほうが断然よいと思います。どちらかひとつといえば、そりゃ「凶悪」をオススメします。