浅田真央

knockeye2014-02-21

 浅田真央が、前日のショートプログラムでの悪夢(ミシェル・クワンによれば「悲痛」)から、一夜明けたフリーでは、自己ベストを更新する、納得の演技で、16位から6位入賞を果たした。
 滑り終えたあとの表情をとらえた写真がすばらしく、おそらく今年一年、これを超えるスポーツ写真はないだろうと思う。
 日系webが、有名なスケーターたちのツィートを拾い出してくれていて、それによると、エフゲニー・プルシェンコは、「真の戦士」と賞賛、エルビス・ストイコという人は、「私にとって今夜の主役は浅田真央」とツィートしたそうだ。
 また、キム・ヨナも、競技翌日の記者会見で、
「浅田は日本で、わたしは韓国で最も注目を浴びたフィギュア選手という共通点がある。その選手の心情を私も理解できると思う。浅田が泣きそうなときは、私もこみ上げてくる」
と語ったそうだ。真のトップアスリートだけが言える言葉で、これが、キム・ヨナの強さなんだなとしみじみと思った。
 sympathizeする力の強さというか、ふつう、こういうふうに、ライバルに共感できないものだし、それどころか、ライバル視していることすら認めたがらないものなのだ。
 もちろん、競技が終わったあとだからこそであるにはちがいないけれど、それでも、トップアスリートについていつも感じることは、こうした心のバランスの取り方のうまさで、宮本武蔵の言葉でいえば、たぶん、観見二眼というのだろう。
 このキム・ヨナの短い言葉の中に、浅田真央に対する自分と、その自分を見ている自分のふたつの視点が存在することに気がつくはずだ。ハートをコントロールするマインドの強さみたいなものを、このキム・ヨナというアスリートにはいつも感じる。
 金メダルを獲ったフィギュアの選手はたいがい引退する。おもに経済的な理由だと思うのだけれど、キム・ヨナがもう一度ソチに来たのは、案外、浅田真央のためだったかもしれないなと思わないでもない。