鉄斎展

knockeye2014-06-25

 ヴァロットンを観にいった日に、近くでやっている富岡鉄斎の展覧会ものぞいてみた。
 鉄斎はまあまあ大きい名前だったはずだが、ここ何年か、長谷川等伯俵屋宗達尾形光琳円山応挙、長沢蘆雪、曾我蕭白伊藤若冲酒井抱一、鈴木其一、狩野芳崖、などなど名前を挙げていったらきりがないが、墨の使い手の絵を観てきた後では、「なんじゃこりゃ?」という感じしかしない。
 すこし譲って、‘文人画’だと見たとしても、おなじ出光美術館の、仙がい和尚の味わいが、ここにはないと思うし、余技としても、北条早雲とか、宮本武蔵の絵の方が品格を感じるし、同じ明治の文人なら、漱石の猫とか、芥川龍之介の河童とかのほうがずっといい。
 富岡鉄斎を見ていると、むしろ、明治の混乱を感じる。絵だけでなく、日本の美の伝統がまじめに顧みられなくなって、‘日本趣味’っていうのが、単なるキッチュになってしまっていた時代が明治なんだっていうことを、事実として、まざまざと目にしたいという人は、鉄斎展を見てみるといいと思った。