「ピッチ・パーフェクト 2」

knockeye2015-10-18

 「ピッチ・パーフェクト 2」は、全米公開時、なんと「マッドマックス 怒りのデスロード」を抑えて、初登場1位なんですって。それはすごいね。だって、「マッドマックス 怒りのデスロード」は、日本でも、週刊文春のシネマチャートで、全員☆5つですよ。
 そもそも、日本未公開だった2012年の「ピッチ・パーフェクト」1作目が、今年5月に急に封切りされたのも、この秋の「2」に間に合わせるためだったのは間違いないわけで、アメリカでは3年のインターバルがあったものを、日本では半年で矢つぎばやに出すっていうことで、ハードルを上げちゃってるんだけど、それだけ自信があったってことでしょうね。
 脚本は、前回に続き、コメディエンヌのケイ・キャノン、監督は、今回から、エリザベス・バンクス。まさに女性だけで作った感のあるガールズムービーが全米1位って、すごいじゃないですか。
 それで思ったんだけど、セス・マクファーレンの「テッド」、あれが男子大学生の悪のりだとしたら、この「ピッチ・パーフェクト」は、女子大生の悪のりなんだろうね。
 冒頭、オバマ大統領夫妻の見守るなか、レベル・ウィルソン演じるファット・エイミーがやらかす大失態は、シナリオを書いてるケイ・キャノンのノリノリが伝わってきます。「ブリジット・ジョーンズの日記」にも、似たシーンがあったけど、今回のは桁外れ。テロの疑いをかけられてるから。
 そんなこんなで、バーデン・ベラーズは、大学生アカペラの世界大会で優勝しなきゃならなくなる。全米大会から世界大会にグレードアップしているとはいえ、フォーマットは1作目から引き継いでいるようなものの、やっぱり非凡じゃないなと思うのは、3年という年月が過ぎ去ったほろ苦さ、とか、重み、みたいのを、ベースに響かせているところ。
 修学旅行で羽目をはずしても、5年後、10年後には、どうなってんのかなって、しみじみする瞬間もあるわけじゃないですか。そういうとこも含めて、女子大生ノリだなって思ったんだけど、そういうノリも、客観視してるところもあって、それがまた笑いに転換してるのは、さすが、プロの技。
 ノリでも非現実的にならないから鮮度が落ちない、客が引かない。アナ・ケンドリック演ずるベッカは、将来、音楽業界で働くために一歩踏み出したところ。でも、大学生のアカペラ王者なんてプロの世界じゃ何でもないんだって、そういうエピソードを入れとくから、ラストが盛り上がるのよ。その「タメ」がうまいね。
 ギャグは、今回の方が、好きにやってる感じで、小ネタも含めて、わたしは好きです。前回ので馴染みになってるせいもあるかしれません。シモネタ、政治ネタ、人種ネタ。前回に引き続き、今回も、韓国人がいじられてるんだけど、アメリカで韓国系の存在感が増してるんでしょうね。
 敢えて難点を上げるなら、前回は、男女の対決だったので、男声と女声のバランスが取れてた。そのせいかどうか、「リフ・オフ」とかいう、相手の歌の途中に割り込んで横取りしてゆくバトルのシークエンスは、前回の方が好きだった。
 それから、今回、新メンバーになった、ヘイリー・スタインフェルドが、以前出演した「トゥルー・グリッド」は、名作の評判が高かったんだけど、日本公開が2011年の3月18日と、東日本大震災の一週間後で、ワリを食ったということがありました。この新入生の加入が、シナリオのポイントになってる。そこもうまい。観て損はないです。