「クリムゾン・ピーク」は、「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロが監督している。
「イット・フォローズ」と同じくホラーだが、こちらはゴシック。
映像はほとんどラファエロ前派。ミア・ワシコウスカの演じるイーディスは、
ジョン・エヴァレット・ミレイのオフェーリアを
ジェシカ・チャスティンのルシールは(特にあごが)、
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティを
参照しているのは明らかだと思われる。
トム・ヒドルストンのトーマス・シャープは、
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティその人を思わせなくもない。
冬になると粘土層が染み出してきて雪を赤く染める「クリムゾン・ピーク」。そして、そこに建つ古い屋敷「アラデール・ホール」。耽美主義の極致。死を美で彩りたい、美を死で封じ込めたい、願望としての幽霊譚で、怖いというより(ま、怖いんだが)、むしろ美しい。「イット・フォローズ」とは怖さの趣きがちがう。
ところで、トム・ヒドルストンは、昨日もふれた「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ」で、主役のロックスターの吸血鬼を演じていた。これに「ジェーン・エア」を演じたミア・ワシコースカは意外ではないけれど、ジェシカ・チャスティンは、「ゼロ・ダーク・サーティー」のあの人と、言われるまで気が付かなかった。
話が変わるのだけれど、「ゼロ・ダーク・サーティー」は、アカデミー賞をとるんじゃないかと言われつつ、かすりもせず、代わりに、ベン・アフレックが監督をした「アルゴ」が、その年のアカデミー作品賞を受賞したわけだけれど、今更ながら、このCIAがらみの2作品は、どうにもきな臭かった。アカデミー賞っていうのは、もともと何かしら政治がらみのことらしいが、今から「ゼロ・ダーク・サーティー」を振り返ると、オバマ外交の異常さがはっきりする。
ウサマ・ビン・ラディンを捉えて殺害したっていうのに、その死に顔さえ発表しないなんてウソに決まってた。カダフィがなぶり殺しになるのを放置したのも、アメリカの意思が働いていなかったとは思えない。グアンタナモの収容所も結局、そのままだし。
中国をつけあがらせ、日米関係は冷え込ませ、ロシアとは冷戦時代に逆戻り、中東ではイスラム国に武器を横流し。このオバマ外交をちゃんと批判できる人に次の大統領になってもらいたい。