「ヘイル、シーザー!」

ヘイル、シーザー!

 コーエン兄弟ジョージ・クルーニーといえば、「バーン・アフター・リーディング」のすべりっぷりを思い出す人も多かろう。「ファミリーツリー」を思い出しても、ジョージ・クルーニーにコメディアンの資質があるとは思いがたいのだが、多分、コーエン兄弟にも客を笑わせるつもりはないのだろう。
 でも、今回の「ヘイル・シーザー!」は、脚本が、勝手知ったる映画界を舞台にしたためかもしれないし、傾きつつあるとは言え、何と言ってもきらびやかなハリウッドの、表と裏の落差、という好条件もあり、スピード感があるとまでは言わないけど、良く言えば「オフビートな笑い」っていうの?。
 ジョシュ・ブローリンは、コーエン兄弟の常連だが、今回はむしろ、「M.I.B.3」の時の、存在するだけでなんとなく可笑しいあの感じ。
 ハリウッド版の攻殻機動隊で、草薙素子を演じようというスカーレット・ヨハンソンが、無茶ぶりにも動じないのは当然。「マジック・マイク」のチャニング・テイタムが踊れるのも当然。でも、今回出色の出来だったのは、アルデン・エーレンライク。投げ縄と馬の曲乗り(実写なのかどうか分からないが)、それから、見事なまでの田舎者ぶりは、英語が分からなくても、訛りの面白さが伝わる。ベタっちゃベタ、オイシイっちゃオイシイんだけど、やっぱそこでちゃんと笑いが取れるのは腕があるんですよ。
 アルデン・エーレンライクは、今度、「スター・ウォーズ」のスピンオフ企画で、若き日のハン・ソロを演じるそうだけど、成否について予断は許されないものの、起用する気持は分かる。日本で言えば池松壮亮みたいな感じ。憎めないけど、そんなにも信頼できない感じ。
 でも、コーエン兄弟は、本質的にブラックなんでしょう。ビキニ環礁の水爆実験とか、そういう小道具の出し方とか、ソ連のスパイとか共産主義の茶化し方とか。そして、今更ながら、ユダヤ教ギリシア正教、ローマ・カソリックプロテスタント
 今回のジョージ・クルーニーにはヤラレタなと思ったのは、最後の長ゼリフ、「感動させようとしてんの?」と一瞬思ったけど、そんなわけなかった。