五島美術館 心の旅

knockeye2016-09-09

 まだ暑いんだけど、こころなし空気が軽くなってきた気がして、五島美術館に出かける気分だった。

 この《光琳蒔絵佐野渡硯箱》が素晴らしくないですか?。
 他にも、俵屋宗達下絵、本阿弥光悦筆の和漢朗詠集の《色紙帖》も色とりどりに意匠が尽くされ華やかだった。
 絵では、伝 周文筆の《雪景山水図》が良かった。
 お茶碗は、楽茶碗の名品が揃っている。長次郎赤楽茶碗 銘 夕暮、のんこう黒楽茶碗 銘 三番叟、黄のんこう茶碗 銘 雪の下紅葉。
 のんこうとは、楽家三代目の楽道入の異名。美術館の説明によると、千宗旦が「のんこう」という銘の花入を贈って以来、宗旦が道入を訪ねるとき「のんこうに行ってくる」と言うようになったのが、その名の由来だそうである。いずれにせよ、後世に異名が伝わるのは、個性が異彩を放っているからだろう。《雪の下紅葉》などは、そもそも黄色い楽茶碗を初めて見た。黄瀬戸かと思った。
 後日、日本橋三越本店で「千家十職の軌跡」という展覧会を訪ねたが、そこでも「これは‘のんこう’でしょう」と思った茶碗がやっぱりのんこうだったりした。たとえば、《僧正》と銘せられた赤楽茶碗、《寿老人》と銘せられた黒楽茶碗は、これは見るからにのんこう。大胆にモダンだが、大胆に飛ぶその距離感が絶妙に正確。躊躇を感じさせず、やりすぎだとも思わせない。無心で無邪気に見えるがセンスだろう。センスってのは、ある人にはあり、無い人には無い。
 五島美術館といえば、古伊賀水指 銘 破袋もあった。古田織部が「これほどのものは二度とできない」と言ったいわくつき。ホントは、織部がそう書いた文も、昔は付いていたのだが、太平洋戦争の戦火に焼失した。
 五島美術館の庭は、いまひとつ作庭の意図がわからない。か、その意図が行き渡ってないっていうか。夏は夏なりにもうちょっとなんとかならないかなぁと思った。やぶ蚊が多いのはしょうがないか。