「怒り」

knockeye2016-10-30

 李相日監督の「怒り」は、身近な誰かを、ある殺人事件の逃亡犯なんじゃないか?と、疑ってしまう3つのお話。だから、これ面白いのは、3人とも、実は犯人じゃない可能性もあるってことです。
 ちなみに音楽が坂本龍一で、これはすごく良い。
 3つのエピソードの中では、松山ケンイチ渡辺謙宮崎あおいのパートが抜群に良い。
 妻夫木聡綾野剛原日出子の東京パートもよい。問題は、森山未來広瀬すずの沖縄パート、ここが、多分引っかかる人は引っかかると思う。ただ、「怒り」という意味では、広瀬すずの「怒り」が描かれるべきだという意見には同意したい。それはよいとして、映画としての「仕掛け」が透けて見える気がした。
 テーマが、信じることと疑うことであるとしたら、沖縄のパートだけ、スケッチが歪んで見えるように思った。
 李相日監督、吉田修一原作コンビの前作「悪人」を観に行った時のこと、今でも思い出すのは、10代くらいの女の子かな、金髪に染めてて、映画の間中、マナーの悪さが目立って、劇場の雰囲気が悪かったんだけど、その女の子がラストで一番号泣してた。周りの客は迷惑だったと思う。
 李相日監督のよいところは、そういうエモーショナルっていうか、感情を動かす力があるところで、逆に悪いところは、そういう力があるのに、登場人物に寄り添うのをやめて、話をまとめようとする強引さかなと思う。