「アイヒマンを追え」

knockeye2017-01-28

 旧正月を機に、韓国の朴槿恵大統領が無罪を主張し始めているそうだが、ここで彼女が復職できるかどうかは、韓国の今後にとって重要だろうと思っている。
 李明博のときにも書いたが、韓国の司法はどこか狂気を感じさせる。日本の警察もその前近代的な未開さで有名だが、韓国は、統治のありかた自体が警察国家を思わせる。
 スピーチの原稿を友人に見せたからと言って弾劾されていたのでは、弾劾されずに済む為政者は世界に存在しないだろう。
 にもかかわらず、あのデモなのだが、あれはいったい何のデモなのか?。デモをすれば民主国家なのか?。
 朝鮮日報の記事によると(リンクしようとしたが今はうまくアクセスできない)、釜山の領事館前に設置された新しい慰安婦像を雨に濡れないように抱きしめている若者がいるそうだ。
 グロテスクとしか言いようがない。そんなことをしても、真実には何の貢献にもならない。韓国の人たちが、なぜ慰安婦の実像について検証してみようという気にならないのか、不思議に思っていたが、そういう国民性ではないらしい。
 韓国人にとっては、信憑性より物語性の方が重要のようなのだ。ソウルの日本大使館前で、水曜日ごとに行われるデモ(ともパフォーマンスともつかないものだが)を、上野千鶴子鶴見俊輔に対して「そんなことであの人たちを説得できるか」みたいなことを言っていたが、その言い方を見るかぎり、あのデモを大真面目にとらえていたようだが、今でもそうなのか聞いてみたい気がする。
 慰安婦像を竹島に設置しようという動きもあるみたいだが、してもらったらよいと思う。そうすれば、この「慰安婦問題」が、人権問題に偽装したナショナリズムにすぎないことが説明しやすい。
 「アイヒマンを追え」という映画を観た。「顔のないヒトラーたち」の前夜を描いた映画。戦後ドイツの建国理念といっても言い過ぎにならないと思う。こうしてナチスと決別した宣言をできるドイツをうらやましく思う。主人公のフリッツ・バウワーは実在の人物、しかも、ユダヤ人で同性愛者で、検事でありながら平気で法を犯す。当時ネットがあれば炎上間違いなしの人物だが、この人がいたからこそ、今のドイツ人は過去を清算したと思える。
 日本でも、たとえば靖国神社をつぶして更地にするくらいの大胆なことを(個人的には特に大胆とも思わないが)できればよいのにと想像してみることはあるが、現実には、放置するほうが正しい判断なんだろう。
 日本がドイツと比べて第二次大戦に対する贖罪がうまくいかなかったのは事実だと思うが、それはひとつには、ドイツと違って、日本人が差別する側であると同時に差別される側でもあったということがある。そして、おそらく今でもそのままだろう。
 もうひとつは、謝罪すべき相手の中国や韓国、北朝鮮が、民主的な平和国家というわけではなかったことがあるだろう。人権を侵した罪について、チベット侵略、文化大革命天安門事件と残虐行為を繰りかえす国に謝罪するのは、まじめな態度ではないだろう。
 韓国の政治家が、「加害者の日本、被害者の韓国」という言い方をしているが、すくなくとも被害者は韓国ではなく元慰安婦であるし、加害者が日本だというのは、かなり広い意味にとってのことだ。慰安婦には日本人もいたのだし、兵士には韓国人もいた。
 慰安婦問題は、当時の売春の環境が悲惨だったことと、戦場でのレイプが放置されていたことのふたつの問題だといえるだろう。本来、二国家間の外交問題になる要素はない。それを外交問題にしているのは、とりもなおさず、韓国のナショナリズムだろう。あれだけの国際的な騒ぎの後に合意がなされたのだから、この後、またこれが外交問題にされるとしたら、もはやこれが韓国の国内問題であることはだれの目にも明らかだろうし、国際社会もそう見るだろう。
 潘基文国連事務総長は、「安倍に十億円を返せ」と言っている。安倍の金ではないのだが。たぶんこのさき大統領の任期ごとにこれが繰り返されるのだろうと思うと憂鬱になる。この猿芝居の連鎖を断つためにも、朴槿恵大統領には任期を全うしてもらいたいと思う。せめても。