「ヨーヨー・マと旅するシルクロード」

knockeye2017-03-09

 Bunkamuraル・シネマで「ヨーヨー・マと旅するシルクロード」。ヨーヨー・マが2000年に立ち上げたシルクロード・アンサンブルの現在までの軌跡を丹念に追ったドキュメンタリー。監督は、「バックコーラスの歌姫たち」のモーガン・ネヴィル。
 ヨーヨー・マはフランスに生まれてアメリカに移住している、中国人でチェリストという、まごうかたなきコスモポリタンだろう。グローバリズムナショナリズムかの二元的な対立の泥仕合にはまりこみそうな現在には、コスモポリタンの視点は有効だろうと思う。
 西洋音楽、クラシックといいつつ、その背景には様々な土地に根差した音楽のルーツがあるって時点に立ち戻ってアンサンブルを再構築してみるって試みは、有意義だし成功していると思う。たとえば、キリスト教では「アーメン」といい、イスラム教では「アラー」というけれど、それはもとはといえば、エジプトの「アメンラー」信仰にルーツがあるといったようなこと。それで対立を解消できはしないが、すくなくとも対立の元栓はオフにできる。
 音楽に詳しい人には今更なのかもしれないけれど、ケイハン・カルホールのケマンチェ、ウー・マンのピパ、クリスティーナ・パトのガイタなんて私は初めて知ったし、魅力的だと思った。
 ケイハン・カルホールなんかアメリカに来た当初はタクシードライバーをして糊口をしのいでいた。しかし、ウー・マンが言っていた。「音楽の世界は狭い」と。「誰かが見つけてくれる」とも。それは、でも、みつかっちゃうほど腕があるからでしょうね。
 ヨーヨー・マはケイハン・カルホールと演奏しながら、「ああ。なるほどこうするんだね」とか言いながら、ケマンチェの弾き方をチェロに取り入れてた。そういうシーンをちゃんとおさえているところがモーガン・ネヴィルだと思う。
 オバマの外交は総じてグタグタだったけど、広島を訪問したのと、キューバ、イランと国交を正常化したのは成果だったと思ってたのだけれど、それもどうもトランプがご破算にしてしまいそうな気配。
 トランプって人は大統領になった今でも、何がしたいかよくわからないのだけれど大丈夫だろうか。トランプには、オバマ政治に対する批判票が集まったとみるべきだろうし、オバマ政治の失敗をきちんと点検してみることが重要なんじゃないかと思う。
 特に、プーチンと安倍を毛嫌いして、日本、ロシアとの関係をぐたぐたにしたのは子供じみた行為だったと思う。苦労して冷戦を終わらせた意味がない。
 オバマが冷戦前に時計を巻き戻してしまったわけだから、それに比べれば、レーガンのマネをするトランプの方がまだましということになるだろう。

Latina

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  • アーティスト:Cristina Pato
  • 出版社/メーカー: Sunnyside
  • 発売日: 2015/05/12
  • メディア: CD