古唐津

knockeye2017-03-22

 「お嬢さん」は、アジアなんとかで賞を総なめしたみたい。「コクソン」はグランプリだったかな。浅野忠信が「淵に立つ」で主演男優賞を獲たのは喜ばしい。「淵に立つ」はそうとうよかったと思う。
 「お嬢さん」は日比谷シャンテで観た。上映まで時間があったので、出光美術館で古唐津の展覧会を観た。開館50周年記念だそうで、これは、「お嬢さん」よりはるかに見ごたえがあり、どちらかというと「お嬢さん」の方がついでになった感じ。
 古唐津ってのは、戦国大名が朝鮮から連れ帰った陶工たちに始めさせた窯なので、朝鮮陶磁の味わいを残すとともに、織部など桃山陶磁の流行の影響も受けている。というわけでバラエティに富んでいて面白い。会期も3月26日までなので、ぜひ足を運んでもらいたい。
 なんといってもいちばん驚いたのはこれ。


ジャクソン・ポロックのインディアンレッドじゃないですか。出光美術館学芸員の人もたぶん絶対そう思って展示してたと思う。壁に文様の部分だけクローズアップした動画が流れてた。「あれ?、なんでポロックの絵があるんだろう」と思ったほど。
 アメリカ人はポロックの絵が好きだと思うんですよ。ということは、この朝鮮唐津水指の美も理解するはずなんですよ。
 こないだたまたまダイヤモンド・オン・ラインに、ハリウッドで活躍しているレコーディングエンジニア・プロデューサーSADAHARU YAGIって人のインタビューを読んでたら、デヴィッド・ボウイの話になってて、デヴィッド・ボウイの歌には、プロの耳からするとけっこう音程が外れているものがあるのだそうだ。もちろん、デヴィッド・ボウイのスタッフにもそれは分かるし、そして修正することも簡単なんだけど、プロはそれはしないのだそうだ。なぜかといえば

それは「修正することに意味がない」からです。そこに音楽の「神髄」はない。「これを修正したほうがよくなる」という人がいたら、その人は「音」を聞いているだけで、「音楽」を聞いていないということになる。

 こういう価値観って、日本の陶芸の価値観と同じじゃないですか。それをハリウッドのレコーディングスタッフが当然のように言っているのが面白いと思った。それをポロックみたいな古唐津を観ていて思い出した。
デヴィッド・ボウイの音源は、なぜ音程が外れているのか? | 情熱クロスロード〜プロフェッショナルの決断 | ダイヤモンド・オンライン デヴィッド・ボウイの音源は、なぜ音程が外れているのか? | 情熱クロスロード〜プロフェッショナルの決断 | ダイヤモンド・オンライン
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歪みの美を愛でる時に、「これがなぜ我々にしかわからないのか?」みたいなことに頭を悩ませる必要はないってことは、実に喜ばしい。
 それと、おもしろいと思ったのは、

ここに並べられている葦文の水指は、上から下へ時代が下るそうだ。つまり、最初、写実的だったものが、だんだん省略されていったのではなく、最初、簡素だったものが、だんだん写実的になっていく。これは、絵を考える時に心に留めておくべきことかもしれないと思った。