クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」と黒沢清監督の「散歩する侵略者」の、映画としての質感の違いはCGなんだろう。私はこの二つの映画のどちらも好きだけど、誰かが片方をすごく嫌いで、片方がすごく好きだとしたら、絵作りに敏感になってしまうか、背後になんとなく感じられる思想性に反応してしまうかの違いだと思う。
黒沢清は国際的に評価が高い日本の映画監督のひとりだが、前作の「ダゲレオタイプの女」は見逃した。外国語で演出するのは、外国語で芝居するよりもっと難しそうに思って、ちょっと尻込みしちゃった。
「散歩する侵略者」は、「クリーピー」も「リアル」もそうだけど、どこからこんな原作を見つけてくるんだろうっていう面白いお話。今年は「メッセージ」っていうエイミー・アダムスの映画と、「美しい星」っていうリリー・フランキー、吉田大八、三島由紀夫の、とてもユニークな宇宙人映画を観たけど、それに肩を並べる今年の三大宇宙人映画なのかもしれない。
長澤まさみと松田龍平カップルのエピソードと、長谷川博巳、高杉真宙、恒松祐里のエピソードの二つの軸があって、考えてみるとどちらも同じイベントなんだけど、個性でこんなにずれてくるのが面白い。
長澤まさみは「アイアムアヒーロー」に続いてファンタジーだけど、存在感に肉体的な説得力がある。松田龍平は「ジヌよさらば」とか、「ええ?」っていう感じの役は他の追随を許さない感じ。
長谷川博巳は、「シン・ゴジラ」よりかこっちの方が好きくらいです。役人より、やさぐれたジャーナリストに好感が持てるってだけかもしれないけど、妙にリアルなんです。繰り返しになるけど、長澤まさみのエピソードと長谷川博巳のエピソードが対置されてるのが面白いです。
他にも、光石研、アンジャッシュの児嶋一哉、笹野高史、前田敦子、満島真之介、などなど、それぞれ見せ場があって、京懐石みたいに次から次に料理がでてきて飽きさせない。
で、CGのとこね。そこだけが弱いと思った。ない方がいいかなと思ったくらい。
クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」は、第二次世界大戦の緒戦、連合国の戦況が不利だったころ、ドイツに占領されたフランスからのイギリス軍の撤退を舞台にしている。「英国王のスピーチ」とか「レイルウェイ」もそうだけど、ジョンブルらしさというと、英国人は面映ゆいかしらないが、英国の個人主義の強さに感動する。「ブリッジ・オブ・スパイ」のマーク・ライランスがいい味を出してます。
でも、最後の新聞を読むところは、よかったかどうかよくわからん。