池口史子展

 四谷三丁目の愛住町にある愛住館に、池口史子の絵を観に出かけた。この美術館はオープンできるかどうかちょっともめてるみたいな報道もあったので気にかけていたが、無事にオープンしていたらしい。
 池口史子(ちかこ)の絵は、以前、松濤美術館で個展を観て気に入っている。その時は、堺屋太一の奥さんとは知らなかったので、「この人ちょっとレズっ気があるんじゃないか」と疑ってたくらい、女性が官能的に見えた。

 マチエールもフラットだし、色彩も、彩度、明度が統一されているというか、それでいて官能に訴えてくる。というか、色彩がフォルムに従属するように彩度をフラットにしているのかもしれない。ちょっとジョルジュ・デ・キリコの色に似ている。日本の女流画家っていうより、スペインとか、メキシコとかの、濃密な空気感と分厚い日差しを背景に持つ画家のように見える。
 東京芸大を出ているが、堺屋太一の奥さんであるために、画壇にまともに取り合ってもらえない時期が長かったそうだ。「奥さま、よいご趣味ですね」みたいな態度をとられていたらしい。有名人と結婚すると、それはそれでそんな変な苦労をするらしい。一時は、もう辞めようかなとも思ったそうだ。
 潮目が変わったのは、カナダ旅行で目にした、穀物倉庫を描き始めた頃から。突然、モチーフとの運命的な出逢いを果たすってことが、画家にはあるらしい。

 私がこの画家を知ったのは、損保ジャパン東郷青児美術館大賞を受賞した頃からと思う。
 東京芸大の頃の絵も展示されていたが、当然ながら、まだ画風が確立されていない。麻生三郎と言われればそうみたいな絵だった。
 私としては、こんな

女性のポートレイトと、この感じの

風景が好み。何というか、キュビズムの展開図みたいな、数学的な心地よさを感じさせる。