『a ghost story』

 たとえば、これから観る映画を選ぶ規準も人それぞれだろうと思うけど、この『a ghost story』の場合は、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でオスカーを獲得したばかりのケイシー・アフレックと、『キャロル』、『ドラゴンタトゥーの女』のルーニー・マーラが選んだ脚本なので、滅多なことはあるまいということがひとつと、もうひとつは、横浜で、ジャック&ベティで上映しているということもある。あの映画館のセレクトはまず間違いないので。
 さらには、いつも手厳しいNewsweek日本版の映画評が、結構熱の入った褒め方をしていたのと、それから、実はこれが言いたいのだけれど、ネットで変な貶しかたをしているブログを見つけて、貶している風を装いつつ逆に褒めてんのかな(?)と思ったぐらいだが、どうも本気で貶してるらしく、こういう貶しかたをされるってことは、これはたぶん面白いぞって、直感的にそう思ってしまった。「誉め殺し」の逆パターン。あれを意図的に書けたら高等テクニックだと思うけれど、たとえできたとしても危険すぎるんだろう。勉強になったはおかしいけど、考えさせられた。

 それはともかく、何より

この造型の力強さ。ランダムに拾ってきて並べてみると






 
 映画の後半3分の2くらいかな、ずっとこの姿で画面に佇む、あるいは歩く。少し激しいシーンもありますが、基本は、沈黙のまま、さまよい歩く。能を意識したってことはないと思いますが、「秘するが花」ってところはありました。
 夢って、見ている間はとてもリアリティーがあるのに、覚めるとそれがとりとめなくなる。うなされてとびおきたのに、どんな夢か憶えていなかったり、ちょっとうたた寝しただけなのに、長い旅を終えたようにスッキリしていたり。
 たぶん、誰もが経験したことがあると思う、そんな夢の感覚を追体験するような、そんな映画だった。もしかしたら、人が死ぬ一瞬にみる夢はこんな感じかも知れない。
 寺山修司の『草迷宮』とか観たことある人は思い出すかも。『シックス・センス』とか『君の名は。』みたいなトリックがあって、「幽霊あるある」で終わるかも思いきや、きちんと収束したのも気持ちよかった。
 上映館が少ないけどオススメできます。