『メリー・ポピンズ・リターンズ』は、絶対見ようと思っていたので、公開初日、仕事終わりにレイトショーで観た。
オリジナルキャストのディック・ヴァン・ダイクもすこし出演していた(実は、前作でも同じ役で「も」出演していたとおもうけど、今作では老けメイクが楽になってる?)。
パメラ・トラヴァースの『メリー・ポピンズ』をウォルト・ディズニーが20年越しに映画に結実させたいきさつは、トム・ハンクスとエマ・トンプソンの『ウォルト・ディズニーの約束』(邦題が原題とかけはなれているとこうやって後で振り返る時に困ることになる。原題は「saving Mr.Banks」と「バンクス氏を救う」ということなので、今回の『メリー・ポピンズ・リターンズ』とつながりがよい。バンクス家のセットなんてあのときのパメラの家をそのまま使ったんじゃないかと思うくらい。でも、あのときのパメラ・トラヴァースの家が1964年版のバンクス氏の家をモデルにしたに決まってるからそれは当たり前か。)で描かれている。
バンクス氏のモデルとされたパメラ・トラヴァースの父親をコリン・ファレルが演じていて、これがすばらしかった。
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『メリー・ポピンズ』は、シャーマン兄弟の名曲の数々(「お砂糖ひとさじで(A Spoonful of Sugar)」、「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(Supercalifragilisticexpialidocious)」、「2ペンスを鳩に(Feed the Birds (Tuppence a Bag))」、「チム・チム・チェリー(Chim Chim Cher-ee)」、「凧をあげよう(Let's Go Fly a Kite)」)と、そして、ダンスシーンに満ちているのだけれど、特に圧巻なのは、煙突掃除人たちがロンドンの屋根を縦横無尽に走り踊る「step in time」。
10分近くも踊り狂ってるのじゃないかしらむ。これがとくに素晴らしいのは、ダンスももちろんなんだけど、カメラワークの、寄ったり引いたり、あおったり俯瞰したり、ときに垂直に、ときに水平に、ときに前後に、ときに左右に、遅く、速く、動き、止まって、そらさない。
さすがに、これを超えるってわけにはいかないと思うのだけれど、しかし、『メリーポピンズ・リターンズ』も、全編書き下ろしの新曲で果敢にこれに挑戦していた。とくに「小さな灯を灯せ」は「step in time」へのオマージュだと思う。
1964年版に対するリスペクトは、たとえば、あえて、アニメと実写が融合する手法にもあらわれている。割れた陶器の中に入っていくシーンのアニメーションは素晴らしかった。エミリー・ブラントとリン=マニュエル・ミランダのダンスにアニメの馬車でのカーチェイスに続く流れは圧巻だった。コリン・ファースが狼になってるアニメ的メタファーのうまさ。CGではなく手描き風の(もしかしたらほんとに手描きかな)アニメなのもさすがはディズニーの伝統を感じさせた。
それだけでなく、たとえば、メリル・ストリープの演じるメリー・ポピンズの従姉がでてくるなど、今回の映画の方がむしろ原作に近いともいわれているように、パメラ・トラヴァースの原作へのリスペクトも忘れていない。
『メリー・ポピンズ』という名作を念頭に置きつつも、原点に返って作り上げたロブ・マーシャル監督の挑戦に大拍手。『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』なみの「待ってました」感は味わえると思う。