京マチ子映画祭 『浮草』4K修復版

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 角川シネマ有楽町京マチ子映画祭ていうのがやっていて、今日は、小津安二郎監督の『浮草』4K修復版を観にいった。

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 この『浮草』4K修復版は、たぶん去年の「小津4K」のラインアップにもあったと思うが、見逃したので。小津安二郎唯一の大映作品だそうである。
 このほかに、今回の4K修復版はともに溝口健二監督の『赤線地帯』と『雨月物語』。わたしとしては、『雨月物語』と、それから、4Kではないが、黒澤明監督の『羅生門』はぜひとも見たいと思っている。
 『浮草』の脚本は、『晩春』『麦秋』『東京物語』とおなじく野田高梧。それを、紀子三部作の原節子とうってかわったイメージの京マチ子が演じるのが興味深い。設定も鎌倉の大学教授や、東京の開業医などではなく旅回りの一座で、この座長を先々代の二代目中村鴈治郎が演じている。この人と、京マチ子若尾文子の三人は、ちょっと堅気の衆には出せない色気を醸し出している。
 そこに、杉村春子がからむ。去年、紀子三部作をまとめて観て、この人のうまさに一番びっくりした。今回ももちろん。
 今年の日本アカデミー賞は、8部門を是枝裕和監督の『万引き家族』が独占した。その直後の鑑賞ってこともあり、もし、『浮草』と『万引き家族』が争っていたら、どちらが勝ったんだろうと考えてしまった。京マチ子安藤サクラ若尾文子松岡茉優杉村春子樹木希林、二代目 中村鴈治郎リリーフランキー。なかなかいい戦いかも。
 しかし、小津安二郎監督に有利なのは、野田高梧という脚本家がいたことだと思う。今回はカラーということもあり、小津安二郎監督の絵のすばらしさを堪能したが、小津監督は画面作りに集中できたのかもしれない。
 去年、小津安二郎監督についてバズった記事があった。
2018年に名監督・小津安二郎の“狂気”がバズった理由 | 文春オンライン
 静止画としてどこを切り取っても、絵として成立している。小津映画にはそういう眼福ともいうべき贅沢な感じがある。
 関西人のひいき目かもしれないが、二代目 中村鴈治郎京マチ子若尾文子の上方言葉のつやっぽさ。最初の方に、三本締めをするところでは、ちゃんと「大阪締め」になっていたのに感心した。そういうところを揺るがせないのはやっぱりすごいと思う。
 若尾文子が郵便局に電報をうちにいくとき、「た」に濁点がぬけてるとか、そういうことがあるから、二時間の映画からでも、もっと長い時間の奥行きを感じられる。あの濁点がぬけているから、そのあとの川口浩との成り行きに納得できる。
 でも、こうやって書きながら、いまさら、巨匠、小津安二郎の作品に何言ってるんだろうと可笑しくなってしまった。さっき書いたけど、1959年、おおかた60年も前の作品が、今年のアカデミー賞作品と比べて何の遜色もないのだから。
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