箱根ラリック美術館のサラ・ベルナール

 箱根ラリック美術館の「サラ・ベルナールの世界展」を口実にして、箱根にでかけたのだった。サラ・ベルナール展に関しては、何もそんなに遠出しなくても、横須賀美術館にも、松涛美術館にも巡回するらしかった。ただ、ラリック美術館が所蔵するルネ・ラリックの作品とともに、彼を世に出したサラ・ベルナールを見られるというのはいい取り合わせとはいえると思う。

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サラ・ベルナールのカードの習作 アルフォンス・ミュシャ

 サラ・ベルナールアルフォンス・ミュシャアール・ヌーヴォーはほとんどセットみたいなもんだから、もちろんほかの有名なポスターも展示されていたけれど、こういう習作の方がレアかなと。

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舞台用冠「ユリ」

 これは、サラ・ベルナールの舞台のために、アルフォンス・ミュシャが原案を描き、ルネ・ラリックが作ったものだそうです。

 私は、これはたびたび書いた気がするが、2009年の秋に世田谷美術館で開催された「オルセー美術館展 パリのアール・ヌーヴォー ―19世紀末の華麗な技と工芸―」で、「サラ・ベルナールの椅子」を観た。これは、何といったらいいか、たとえて言うと、ゲームとかアニメのラスボスが座るような椅子をフランスのトップメーカーが採算を度外視して実物にした椅子を想像しても、たぶんそのスケールをはるかに超えると思う。
 もちろん、展覧会の展示品なので、「お手を触れないでください」となっているのだが、「さわってもいいですよ」と書いていても、おそれおおくて誰も手を出せなかったと思う。わたしは見た瞬間に笑ってしまいました。すごすぎるものを見ると人間は笑うね。
 あの椅子をもう一回見たいと思っているが、今のところ再会していない。ただ、サラ・ベルナールという女優がただものではないということだけは心に刻んだ。あのときのブログを見ると、ルネ・ラリックの≪芥子の髪飾り≫も展示されていたようだが、「ゴージャスすぎて誰の髪も飾ったことがない」と書いてある。
 しかし、にもかかわらず、ルネ・ラリックの香水瓶は、それまで富裕層に限られていた香水の楽しみを、小分けにして売ることで、一般に手に入りやすくしたのでもあるそうだ。

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ルネ・ラリックの香水瓶

 つまり、このゴージャスさはゴージャスさのイメージにすぎない。それ以来、わたしたちはほとんどのものをイメージで判断するようになった。

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ペンダント/ブローチ≪冬景色≫


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彫像「ガラテ」1925年のパリ万博における≪フランスの水源≫の一部
 
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花器≪バッカスの巫女たち≫1927 オパルセントガラス