この8月29日に、文在寅韓国大統領が「一度反省を口にしたから終わったとか、一度合意したから全て過ぎ去ったと終わらせることができる問題ではない」と徴用工問題について演説したそうである。
これの何が間違っているかというと、まず、その一は、辛坊治郎もテレビで批判したそうだが、国家間の合意と歴史的な反省を混同している。
歴史的な反省という意味では、例えば、原爆の投下について、アメリカでは今でも、それが正しかったか、間違いだったか、と議論が続いているし、日本でも、過去の戦争について、二・二六事件について、満州事変について、靖国神社について、などなど今でも不断に議論が続けられている。
たとえば、さきごろ、朝日新聞が、慰安婦をめぐる誤報について、三十年以上訂正も謝罪もせず放置していたことを認めたのも、そうした歴史的な反省の一環なのである。
そういう反省はもちろん今後も続けていかなければならない。いうまでもないが、それと、国家間の実務的な合意とは話は別である。でなければ、戦争は永遠に終えられないことになってしまう。戦勝国は敗戦国から永遠にむしり取り続けますってことが正しいかどうか、それこそ、歴史を反省してみればわかるはずである。
『東京裁判』や『日本のいちばん長い日』を観れば、戦争をどうやって終わらせるかに、戦勝国も敗戦国も知恵をだしあって、自制心をもって努力した結果、国家間の合意が国際的な場で結ばれていることがわかるだろう。
日本もアメリカも他の連合国も、もちろん、決定について不満に思うこともあったに違いないだろう。しかし、戦争を終わらせて平和な未来を建設するという目的のために、最も適切だと思える形で、合意を形成したのである。
それを一体、韓国一国の都合で反故にしていいと思っているのは何故なのか。慰安婦問題についても、徴用工問題についても、いったん国家間で成立させた合意を、政権が変わるたびに反故にして、それで正義を行っているつもりになっているのがおぞましい。十人いれば十通りの言い分があり、正義がある。共存しようとすれば、少しずつ譲るしかない。当り前じゃないか。
自分の考える正義を独善的に振り回して、他人には一切配慮せず、自国の意見を押し通そうとすれば、軍事独裁政権になるしかない。韓国は、1998年に金大中政権が誕生するまで、現に、軍事独裁国家だったのである。あれからわずか20年で元に戻ってしまった。
先日も書いたように、韓国は軍事独裁政権時代の拉致、拷問、などの罪を一切清算していない。文在寅韓国大統領は「一度反省を口にしたから終わったとか・・・」云々といっているが、韓国国民自身は、その「一度」も反省していない。呆れる。
間違っている点、その二は、韓国の大法院が日韓の合意を覆した判決について、文在寅韓国大統領は、当初、「三権分立」を理由に、これに従わざるえないと言っていたはずである。
そもそも、その言い分も、反駁するのに一分もかからない。三権分立を言うなら、司法の決定とは別に、行政も独自の決定ができるはずなのである。司法の決定に行政が身動きできないなら、それは行政が司法に支配されているのであって、三権分立にならない。
そういう小手先の屁理屈で「徴用工判決」を押し通し、日韓の過去の合意を反故にしようというのが、結局、行政の判断だったと、今回の「一度反省を口にしたから終わったとか・・・」の発言は白状しているのも同じである。「三権分立」云々が民主主義を装ったウソにすぎなかったことが露見してしまっている。
韓国大法院の「徴用工判決」について、日本は日韓請求権協定に基づいて仲裁委員会の設置を呼び掛けている。それを無視したのは韓国の方なのである。
大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話) | 外務省
ところが、韓国政府の担当者は
韓国側が元徴用工問題をめぐる大法院(最高裁)判決などについて、外交的解決をめざす対話を求めてきたとし、「日本側は全く真剣に取り組まなかった」と主張
している。もう一度言うけど、日本は日韓請求権協定に基づいて仲裁委員会の設置を呼び掛けているが、韓国がそれを無視したのである。
15日の「光復節」式典で行った演説についても、「高位級の人物が日本を訪問し、発表前に内容を知らせたのに、日本側は何の反応も見せず、感謝の言葉もなかった」と批判した。
念のため、もう一度言うけど、日本は日韓請求権協定に基づいて仲裁委員会の設置を呼び掛けているが、韓国がそれを無視したのである。頭がくらくらする。
このような国を相手にまともな外交ができないのはいうまでもないが、だからと言って匙を投げるわけにはいかない。そもそも、「まともな外交」なんてものだけで外交が成立したためしはないのだから、まともでない国に対しては、まともでない外交をするしかない。
北朝鮮、中国、ロシア、アメリカ、オーストラリア、ASEAN諸国、インド、など、地政学的なバランスを考えて、手を打つべきだと考える。
これは、前にも何度も書いたことであるが、むかし、小泉今日子がピカピカのトップアイドルだったころ、韓国のテレビ番組に出たことがあった。年末の、おもしろ映像集みたいな番組で観たんだと思う。
「日本のアイドル、小泉今日子さんでーす」みたいな感じで、呼び込まれたほとんど直後くらいに、小泉今日子をはさむように座ったおじさんふたり、たぶん、韓国の久米宏と関口宏みたいな感じの人たちだったんだろうが、やおら殴り合いのけんかを始めてしまったのである。たぶん酔ってたんだと思う。韓国の知識人らしいふたりが、日本の十代のアイドルにあがってしまって、醜態を演じている、その光景は、当時は「嫌韓」とかないから、たんにオモシロで放送されたに過ぎなかったが、なにかうすらざむい気がしていまでも忘れられない。コンプレックスの強さが尋常じゃない。日本でも「日本ヨイクニ、エライクニ」といまだに思い続けている人もいるだろうが、他の多くの人は、他の多くの国の人がそうであるだろうように、ごく自然に自分の国に愛着があるだけだろう。
しかし、ある世代の韓国人の日本に対するコンプレックスは尋常でない。強すぎるコンプレックスで、ものがゆがんでみえるのだろう。韓国が日本からの呼びかけに応じていないのに、日本が韓国からの呼びかけに応じていないように見えるのも、そのためだと思う。若い世代にそれが受け継がれないことを願うし、たぶん、受け継がれないだろうと思っている。