太田喜二郎と藤井厚二 の展覧会 目黒美術館にて

 目黒川がすっごい臭い。桜の盛りにカヌーとか漕いでる人がいるのが信じられない。この川の汚さが、東京の民度なんだなと思う。情報として消費されるだけの、誰にも愛されない川。誰ともつながってない町。
 目黒区美術館で「太田喜二郎と藤井厚二 -日本の光を追い求めた画家と建築家」というちょっと珍しい展覧会。
 藤井厚二は、京都の大山崎にある聴竹居を造った建築家だ。務めていたことのある縁であろうか、聴竹居はいま竹中工務店が維持管理している。このところの地震と台風で被害を受けたと聞いていたが、去年の秋から修復工事が始まっているということだった。
 聴竹居は、昭和三年に建てられた、日本家屋の到達点と言っていい建築だと思っている。見学も可能なので、関西に住んでいるころなら、すぐにでも訪ねたいのだけれど。

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 で、「太田喜二郎」って誰なの?と思ったら、京都の大学で同僚だったらしく、この人のおうちも藤井厚二が設計したのだそうだった。聴竹居に気持ちがいきすぎてて、藤井厚二の他の作品について何も知らなかったので、この太田邸、小川邸、喜多源逸邸などが見られたのは収穫だった。
 太田喜二郎は、黒田清輝のところで学んだあと、黒田の勧めでベルギーに留学し、エミール・クラウスに師事した。
 エミール・クラウスは、ベルギーの印象派と言われるが、過去に観た展覧会では「ルミニズム」と呼ばれていた。印象派から派生した点描をさらに細密にしたような、ものすごく彩度の高いカラー写真のようなvividな絵で、当時は今よりずっと人気があった。
 太田喜二郎は、師匠のように描けないのは、自分の目に欠陥があるからではないかと思い悩んだこともあったそうだ。
 エミール・クラウスの絵を観て、「俺の目が変なんじゃないか」と思うってのは、よくわかる。モネが描いたウォータールー橋をエミール・クラウスも描いているが、エミール・クラウスの絵の方が色鮮やかで、ルミニズムのことば通り光り輝いて見える。モネの絵は、すぐれた水墨画のように、そこに空間を感じさせる。
 太田喜二郎も晩年には点描を捨てた。同じようにのちには点描を捨てたピサロは「点描は絵からタッチを奪ってしまう」と言っていたように記憶する。個人的には、エミール・クラウスも点描を取り入れていない《ピクニック風景》のような絵の方が好き。