『ラスト・ムービースター(THE LAST MOVIE STAR)』観ました。

 バート・レイノルズは、タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演が決まっていたそうだが、果たせなかった。この映画、奇しくも彼自身をモデルにした映画だが、これが遺作になった。
 あらすじは、バート・レイノルズ演じる老映画スター、ヴィック・エドワーズに、ある映画祭の招待状が届く。功労賞を授与するという報せで、過去の受賞者には名だたる名優が名を連ねている。愛犬を老衰で見送ったばかりというタイミングもあり、ほとんど気まぐれで招待に応じたのだけれど、その映画祭は、地元の若者たちが手作りで運営するささやかなもので、受賞者で招待に応じたのは彼が初めてだとわかる。V.I.Pとは言い難い待遇に、立ち去ろうとするヴィックだったが、映画祭会場が故郷にほど近いことに気がついて、映画祭の運転手役の女の子に寄り道を付き合わせることにする。
 ヴィック・エドワーズの経歴は、フィルモグラフィーも、元アメフットの選手ということも含めて、おそらくほぼバート・レイノルズ自身のものだろう。
 でも、ヴィック・エドワーズは、バート・レイノルズではない。だから、バート・レイノルズが演じられるのだし、バート・レイノルズをモデルにした誰かをバート・レイノルズ自身が演じるっていうウソの中に、ドキュメンタリーでは描けない、思い切った表現ができる。
 例えば、映画祭の用意した安ホテルの窓から、駐車場にたむろする娼婦を見つけて、バイアグラを飲もうとするとかは、ドキュメンタリー映画では無理だと思う。その老醜を演じてるバート・レイノルズは、やっぱりカッコいい。生涯を振り返るドキュメンタリー映画を撮るより、こっちの方が断然カッコいい。
 公式サイトによると、「レイノルズがジェームズ・ボンドハン・ソロを断った話は有名」だそうだ。そういうちょっと損してる感じ、かしこくない感じ、まちがってるし誰も得しない感じ、が、バート・レイノルズにすごく合ってる気がしたし、タランティーノが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にオファーするんだろうなと思った。
 小さな映画祭を運営している若者のひとりに『6才のボクが、大人になるまで』のあの男の子、エラー・コルトレーンが出ていた。いいキャスティングだなと思った。アメリカの地方都市って、ホントにそんな小さな映画祭を自分たちでたちあげる若者たちがいそうな気がするし、そういうのに、うっかり出かけるのは、バート・レイノルズ(をモデルにした老スター)であって実にしっくりくる気がした。