新井浩文の公判について、ささやかな異議申し立て

 まず、このハフィントンポストの記事をリンクするので、あとでか先にか、とにかく読んでおいてほしい。

www.huffingtonpost.jp

 『100円の恋』『葛城事件』『その夜の侍』など、新井浩文はだいすきな役者さんなんだが、それでも曲庇するつもりはない。法に照らして専門家が有罪というならそうなんだろう。

 ただ、この記事を読んでも、これを「レイプ」「暴行」と断罪してほんとにそれが正しいのかという疑問が、それは、専門的な疑問ではなく、それこそ、素朴な疑問がわいてしまうので、誰が読むか知らないけれど、一応ここに書いておく。

 引用の記事を書いた人は弁護士だそうで、
「このように書くと、新井被告人が起訴されたのは、ペテンを本当にするための陰謀のように思うかもしれないが、そうではない。」

と書き、

「かつては、このような被害者の恐怖は、検察庁で理解されなかったが、今では、性犯罪被害者の心理について、検察庁の理解が深まったことにより、新井被告人は起訴されたとみるべきであろう。」

と書いているが、どうもそこに説得力を感じない。

 試みに順番を入れ替えてみようか?。

「今では、性犯罪被害者の心理について、検察庁の理解が深まったことにより、新井被告人は起訴されたとみるべきかもしれないが、そうではない。」

「新井被告人が起訴されたのは、ペテンを本当にするための陰謀とみるべきだろう。」

と書いても、違和感がない文章になると思うがどうだろうか。

 レトリックを弄しているのではなく、たとえば、つぎのようなところ。

 「新井被告人がしたとされているのは、被害者の「手を取って股間に押しつけた」「腕を強く引っ張った」「頭をつかんで股間に押しつけた」「ズボン・パンツを強く引っ張られて脱がされてしまった」など、通常の性行為に付随し得る行為であった。」

 「通常の性行為に付随しうる行為」を「レイプ」って断罪することはほんとに正しいのかが私にはわからない。この弁護士さんは画期的だと興奮しているみたいだが、専門家はうれしいのかもしれないが、一般の生活者の気持ちに寄り添っているのかどうかわからない。
 
 いずれにせよ、「通常の性行為に付随しうる行為」でも「暴行要件」を満たしうるとしても、ただそれだけでは、「強制性交等罪」にはならない。あたりまえだ。なんで、裁判所にセックスのやり方まで口出しされなきゃならないのか。問題は「被害者の承諾」があったかどうかだ。

 「被害者の承諾」。こんなおかしな言葉もない。承諾があれば被害者じゃないんだし、被害者なら承諾はないきまってる。これはいいかえれば、被害者が被害者だったかどうかは、承諾したかしなかったかで決まるってことだろう。じゃあ、承諾って何?。セックスの前に契約書でもかわすの?。そんなひといないでしょ?。てことは、「強制性交等罪」は、女性の匙加減ひとつってことじゃないの?。「去年のあのとき、わたしは承諾してませんでした」って、それってほんとにまっとうなことなんだろうか?。

 たとえば、この「被害者」は「モノのように扱われすごく悔しい」と初公判で語ったそうだが、その乙女心に寄り添うのが果たして法的正義なのか、わたしは疑問を感じる。人間的な性行為なんてものはない。性行為は動物的な行為なのである。女が「モノのように」扱われていると感じているとき、男も「モノのように」なっている。それを受け入れないでセックスなんてできるんだろうか?。たしかに、ありうるだろう、そういう品行方正なセックスも。だからといって、そっちの方が高等だとは思わない。「モノのように」扱われたという女性の主観だけで、それを「レイプ」というべきなのかが疑問だといいたいのだ。

 それと、もう一点は、「事前に、性的マッサージではないことの告知があった。」というのだが、そもそも「性的マッサージ」とは何ですか?。「性的マッサージ」ではありません、でも、カイロプラクティックで整体でもありません、じゃ、何なんだ?。そのグロテスクに気が付かない方が異常だと思う。その欺瞞にお付き合いしなかったことが非難されるべきなんだろうか?。

 「それでも、暗い部屋に、2人きりであれば、女性は怖い。」

といいつつ、

「部屋の電気を消すことに同意した」というのも納得できない。怖ければ同意しないだろう。同意したのに怖いは通らないのではないか。

「私個人の意見としては、部屋の電気を消すことへの同意は、「部屋の電気を消すこと」にしか同意していないし」

と書いているが、だとしたら、
「暗い部屋に、2人きりであれば、女性は怖い」
も、単なる一般論に過ぎないのではないか、私個人の意見としては。

 私個人の意見としては、ちょっと子供じみて聞こえる。
 成人男女が密室でふたりきり「性的マッサージではない」マッサージをしている。部屋の電気を消すことに同意したけど、それは、部屋の電気を消すことに同意しただけで、他意はない。
「部屋が真っ暗だった」
電気を消すのに同意したからね。
「体格差があって」
体格差がない客に限定すべきだったね
「怖くて逃げられなかったと述べている」。
これを聴いているこっちも怖い。

 社会の健全さについて聞いてみたいと思うのだけれど、アロママッサージという「性的マッサージではない」マッサージを灯りの消えた部屋で男女二人きりで受けていて、性的に興奮した男は性犯罪者なのか?。そんな男は社会から抹殺される、それが健全な社会なのか?。
 とにかく、今後の法解釈によって、このような男性たちは、引用した弁護士さんみたいな人たちの手で、ばんばん刑務所に放り込まれる社会がやってくるそうで、件の弁護士さんは心待ちにしているそうだ。