坂田一男展 東京ステーションギャラリー

 坂田一男というあまり耳にしない画家だけれども、戦前戦後を通して、ずっと抽象画を描き続けた。

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今となっては懐かしい感じがする。
 参考として、フェルナン・レジェやル・コルビュジエの抽象画と、あまり目にしないところとしては、坂本繁二郎が油彩で描いた機械の絵などがあって、坂田一男の絵は、確かにこの同時代にあると思わせた。

 アトリエが浸水したことがあったそうで、そのあとの画風の変化も面白かった。

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 骨董の方では「海揚がり」とか「汐くぐり」とか呼ばれるものがあるが、その油彩版だ。もともとの絵の上にポロック風の偶然性が重なるのが面白い。
 ずっと絵を見る気持ちで観ていられるのが心地よい。コンセプチュアルアートのように、コンセプトの押し付けがない。コンセプチュアル・アートの人たちは、絵よりコンセプトの方が高級だと思っているらしいのが、横光利一形式主義論争とか、遡れば、森鴎外坪内逍遥の間で交わされた没理想論争以前の状況に引き籠もっているように見えて滑稽だと思う。

 坂田一男は「ワシの絵は50年経ったら分かるようになる」と言っていたそうだが、そういうこと言う人でほんとにそうなる人はめずらしい。一見の価値がある。
 東京ステーションギャラリーにて、2020年1月26日まで。