『37seconds』観ました

映画「37seconds」公式サイト

 オープニングから、主演女優の佳山明と母親役の神野美鈴(原田眞人監督の『日本の一番長い日』で阿南惟幾陸軍大臣の奥さんだった人)のフルヌードの入浴シーンで、気合入れて観なきゃいけないんだなって気になった。 
 監督はHIKARIという女性。日米合作映画で、日本以外ではNetflixで配信される。
 生まれた時に37秒間呼吸が停止していたために、脳性麻痺になってしまった女性を主人公としている。タイトルの「37セカンズ」はそういう意味。
 ほんとに障害のある人が主人公を演じてるわけだから、ドキュメンタリーなのかなと思うじゃないですか?。すくなくとも、「事実に基づく」フィクションかと思うじゃないですか?。ところが、これがすがすがしくも全くのフィクションだそうです。
 しかし、公式サイトの「プロダクションノート」を読むと、この成立過程が入り組んでて面白い。
 全くのフィクションからはじまった映画に、あとから事実が紛れ込んでくる。これの何が面白いかというと、ノンフィクションのドキュメンタリー映画は、最初の出発地点が混じりけなしの事実だとすると、そこから映画を作る過程で、だんだんだんだんウソが混じりこんでくるわけじゃないですか。そして、こないだ、すずきじゅんいち氏の自戒の言葉にもあったように、ついには事実とま反対のウソを作り上げることもできちゃう。
 ところが、今回みたいに、最初の出発点がウソと決まってるところに入り込んでくる事実は、事実でしかありえない。フィクションの中に異物として混入してくる事実にフィクションが負けるわけにいかないから、シナリオにいつも緊張感がある。
 シナリオはどんどん書き換えていったそうです。37秒間のエピソードは、主役を務めることになった佳山明さんの実話。それと、「クマさん」という男性の障碍者の方もご本人。障碍者の性に関する支援活動をしている。それと、彼のヘルパー「トシ」さんは、辻本さんというモデルがいて、この人は「のらヘルパー」という、実地の経験がない者にはちょっとわかりづらいスタイルのヘルパーさんだそうです。さすらいのヘルパーなんですかね。
 あの「トシ」さんが物語をドライブしていく。フィクションで書き始めたものを途中から事実が追い越していくのが面白かったです。タイに双子のお姉さんがいるのも事実だそうです。
 主人公が、坂道系とかグラビア系の美少女じゃなくてほんとによかったと思います。監督は「ユマはどこかにいるはず」と言ってオーディションをしたそうです。そして、現にいたんだから、勝ちですよね。ユマさんもクマさんもトシさんも現にいたんだから。
 こういう人間の手触りみたいのがほしいと思ってしまいます。よくできた話も好きなんですけど、そしたら、こないだのフランス版シティハンターみたく、エンターテイメントに徹してほしい。
 と書きながら『ラストレター』の松たか子について考えているんですが、あの映画の松たか子はほんとによかった。お姉さんのお葬式の日にお姉さんの同窓会の案内をあずかるわけじゃないですか。庵野さんもいってるけど、ほんとはハガキ1枚で事足りるのに、でかけていく。理不尽なようですごくわかる。
 ところで、『お嬢ちゃん』で主演していた萩原みのりがでてました。あの時とは全く違う感じで。
 Netflixkのパラドクスってあるかもしれない。資金が潤沢だから高画質で撮れるけれども、Netflixだから、上映館が限られていて、上映終了後は小さい画面のタブレットやパソコンでしか見られないという。朝の8:20から上映開始ですよ。ちょっときつかった。


映画『37セカンズ』予告編

 蛇足ながら、この映画で渡辺真起子さんが演じていた障がい者専門のデリヘルは実在していて、昔、本で読んだことがあります。

私は障害者向けのデリヘル嬢

私は障害者向けのデリヘル嬢

  • 作者:大森 みゆき
  • 出版社/メーカー: ブックマン社
  • 発売日: 2005/12/01
  • メディア: 単行本