『かもめ食堂』『めがね』『プール』

 観のがしていた映画のおさらいシリーズ。
 今回は『かもめ食堂』『めがね』。Amazonプライムビデオで無料で配信していたので。

かもめ食堂

かもめ食堂

  • 発売日: 2016/06/29
  • メディア: Prime Video

めがね

めがね

  • 発売日: 2016/06/29
  • メディア: Prime Video

 『プール』は、いまはなき横浜みなとみらいの109シネマで観た。あれは名作だと思っていて、その自分の評価のわりには、世間的にはどうなのかなともやもやしていたのだが、みなとみらいの109シネマが閉館記念で上映する過去作品に選ばれていて、ひそかに喜んだものだった。

プール

プール

  • 発売日: 2016/08/10
  • メディア: Prime Video

 『かもめ食堂』『めがね』『プール』は、ストーリーに連続性はないものの、三部作みたいなあつかいをされている、ちょっとユニークな作品群である。
 わたしは『プール』に圧倒されていて、かえってその前の2作に気がいかなかったが、観てみてなるほどと流れが腑に落ちた。
 この3つの作品は、日本以外ではちょっとお目にかかれないたぐいの名作だと思う。アメリカだとノア・バームバックとか、レベッカ・ミラーとかが似ているかしらむ。と言いつつ、思い浮かべているのは、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』と『マギーズ・プラン』なんだけれど、それでももっとドラマチックにちがいなく、これほどアンチ・ドラマで平気なのは、たぶん、日本には「エッセー・マンガ」というジャンルが確立しているから、映画もこのタッチが抵抗なく受け入れられるのだろうという気がする。
 『かもめ食堂』の原作は群ようこの同名小説。今回、おさらいなのでそれも読んでみたけど、小説より映画の方が完成度が高いと感じた。それがいいすぎだとしても映画も原作に負けてない。ただ、骨格はもう原作小説でできあがっている。

かもめ食堂 (幻冬舎文庫)

かもめ食堂 (幻冬舎文庫)

 
 しかし、『めがね』は荻上直子監督のオリジナル脚本のようである。群ようこの『かもめ食堂』からこういうふうにトランスフォームするっていうのが面白い。それは『プール』が次に来ることを知っているうえで観るとという意味。

プール

プール

 おさらいなので『プール』の原作である桜沢エリカのマンガも読んでみた。おどろいたことにストーリーはほとんど映画と同じなのだが、映画のマジックでダブルミーニングになっている部分がかなりあり、監督が前の2作品の荻上直子から大森美香にスイッチしているにもかかわらず、そのテイストを引き継いでいるために、桜沢エリカの原作にない空気が、原作の空気のまわりにもうひとまわりできあがってしまっている感じなのだ。
 私は音楽に疎いので、この主題歌を歌っているハンバートハンバートを実在のミュージシャンかどうか疑っていた。ナボコフの『ロリータ』の主人公と同名ってできすぎていると思ったのだ。ナボコフは「小説は読むことはできない、再読できるだけだ」と言った人ですからね。
 三作とも企画した霞澤花子ってひとがユニークなのかもしれない。いずれにせよ、これは世界に類例のない日本独特の映画たちだと思う。