コロナ時代、エンタメ配信の伸びしろについて

f:id:knockeye:20200724222253j:plain
OMIYAGE

 『パブリック 図書館の奇跡』は満席だった。とはいっても、ソーシャルディスタンスで椅子はひとつ飛ばしなので、コロナ以前の数え方なら50パーセントの観客数ってことなんだけど。
 映画館って、そもそもそんなに儲かる商売ってわけじゃなかった。「劇場内でのご飲食はご遠慮ください」とかいいつつコンセッションでポップコーンを売ってるのは、いちばん収益があがるのはコンセッションだからだと聞いたこともある。
 このコロナ禍は映画館に限らず、エンタメ業界には大打撃。映画館も生き残りをかけて、配信しながら映画館にも収入を配分する仮想映画館のような取り組みもあった。だけど、それは映画館にとって両刃の刃で、じゃあ配信の方がいいって層が出てくる可能性は高い。現に、今度の行定勲監督の『劇場』なんかは劇場封切りと同時にネットでも配信される。 

 映画館は、もともと換気システムが整備されているし、演者から感染する危険性はないし、観客が縦ノリってこともなくソーシャルディスタンスを保ちやすい。マスク着用が義務づけられているし、なんならレストランと比べてさえ安全性が高い。それでも、ソーシャルディスタンスを守る限り集客数は減る。となれば、配信で収入を補填しようと考える。NetflixAmazon prime、hulu、U-NEXTなど、配信サービスには逆に好機となるかも。あるいは、大資本の映画館は、自前の配信サービスを立ち上げようとするかもしれない。配信サービスの群雄割拠、百家争鳴の時代が幕を開けそうだ。

 サザンオールスターズの無観客配信ライブに18万人がアクセスした。星野源の配信ライブ「GRATITUDE」は、10万人が視聴した上に、見逃し配信でも相当の売り上げを記録したそうだ。このふたつは無観客ならではの演出が好評で、しかも、配信の場合、ダフ屋の問題が起きない。転売トラブルがない。チケットは売れたのに空席が目立つなんてことはなくなる。その意味からも、配信ライブという形式がこれから発展していくのびしろはでかいのではないか。

 サザンオールスターズ星野源なんて有名どころじゃなくても、エレキコミックやついいちろうがやった「オンラインやついフェス」なんてのは、YouTube、LINEライブ、ニコ生、インスタ、ツイキャスなど、複数のプラットフォームで、しかも札幌、名古屋、福岡、その他、いろんな場所からライブ実況して、物によっては観客もZOOMで参加できる、世界初の試みをクラウドファンディングでやっていた。オンラインフードコートまであったそうだ。収支トントンだったらしいけど、成功と言っていいでしょう、そりゃ。
 そのやついいちろうが、こないだラジオで言ってたことには、なんか大阪のライブハウスの再開初日のライブに急遽出演したんだって。200人のキャパなんだけど、ステージと観客との距離、観客同士の間隔などのソーシャルディスタンスを守ると、16人しか入れられなかったそうだ。
 先日、クラスター感染が発生した新宿シアターモリエールは、定員186人のところ、その半数を入れていたという。劇場の作りも違うから一概に言えないが、結果から言えば甘かったことになる。当面、ライブハウスは、かなり、限定的な人数しか入れず、その分、配信で稼いでいくしかないだろうと思う。

 いち早く配信に移行したのは音楽だが、vinylと言われるアナログレコードが今でも売れているのは参考になるかも。旧譜だけじゃなく、新譜もvinylで売られることも多い。もちろん、vinylの方が音が良いということもあるが、vinylの方がモノとして魅力がある。アナログレコードプレーヤーがなくても、vinylに付いてくるQRコードから配信が聴ける。
 映画でもこれと同じサービスが可能なんじゃないかと思う。ムビチケにQRコードをつけ、そこから配信でも見られるようにする。従来のムビチケと同じように、映画館の座席も一回は指定できる。しかも、公開から2週間はいつでも配信で見られることにすれば、劇場で見た人も、あそこどうだっけ?みたいなときに便利。配信で見た後、やっぱり劇場で観たいってこともあるかも。

news.yahoo.co.jp
qetic.jp
www.itmedia.co.jp


 コロナ以前から、最近はライブビューイングが増えてきていたが、この流れも大きくなるかもしれない。ライブハウスで無観客でやり、それを映画館でライブビューイングする。その方が安全性が高い。配信ライブとどう違うかと言えば、圧倒的に音がいい。

 ライブビューイングは、

1. 主催側は会場のキャパ以上の集客が見込めるし、プロモーションにもなる。
2. 映画館側は、推測だけど、映画より安く買えて、しかも、けっこう客の入りがいい。
3. 観客は、遠くの会場にまでいかなくて、プラチナチケットのライブが見られる。

 具体例をいうと、「オードリーのオールナイトニッポン 10周年ツアー in 日本武道館」のライブビューイングが全国41館、1万人。「さよなら たりないふたり」が全国53館、1万5000人。
 観客にすれば、実際ライブに行くより安いんだし。交通費、宿泊費考えたらお得感がある。
 「さよなら たりないふたり」の会場だった横浜ランドマークタワーホールのキャパは750人だそうだ。それに1万5千人の観客がついた。そしてそのあとはそれがU-NEXTのコンテンツになってる。
 ここまでうまくいくかどうかはともかく、ライブ、ライブビューイング、配信のこの三角形をどううまく回して行けるかで、エンタメ業界の勢力図が変わるかもしれない。